2019シーズン総括■この道の正しさを知る
- 2019/12/31
- 19:22
Jリーグ11年目、J3で5年目の2019年は降格後過去最高の4位(16勝10分8敗)だった。勝点54、勝利数16、1試合平均得点1.59、同失点0.91もJ3での最高値。J参入後初の5連勝や1試合5得点もマークした。
昇格した1位・北九州、2位・群馬との勝点差はそれぞれ8、5。直接対決で対北九州が2分、対群馬が1勝1分だったように実力差はほとんどなかった。昇格していてもおかしくないシーズンだった。
■必然の猛追。わずかに届かず
昨季終盤の充実ぶりから期待された通り、開幕から存分にチーム力の高さを発揮した。ゲーム内容は「圧倒的」と形容してもおかしくない水準に達していた。ボールを支配して押し込み、チャンスが多く、ピンチは少ない。この傾向はシーズン通して続き、シュート数434本はリーグ最多。被シュート数231本も同2位と少なく、最少だった藤枝とは1本差だった。
これは安達亮監督が当初想定していた以上の出来だった。しかし一方で、決定機をつくる割に得点数が伸びないのも予想外だった。自縛にかかったように絶好機を逃すシーンも多く、勢いに乗り切れなかった。チームでは「押し込み過ぎて敵がゴール前に密集し、かえって崩しづらい状況を招いている」と判断。5月に入った時点ですでに攻撃のスピードアップを課題として捉えていた。
それでも第10節まで8戦負けなしを記録するなど4勝5分1敗(4位)。第9節・G大阪U-23戦後に監督が「みなさんの人生観を変えるような試合をしてみせる。応援してほしい。ついてきてください」とのメッセージをサポーターに届け、翌節の長野戦(6月2日)をFW田中智大の2ゴールで勝ち今季初の2連勝を飾る。トライし始めた縦に素早い攻めが得点につながり、弾みがついたかに思われた。
しかし、次の第11節・秋田戦(6月9日)でFW中村亮太の2得点に屈する。ここから夏の中断前の第20節・秋田戦(8月11日)までの10試合が2勝3分5敗(第20節終了時10位。2位と勝点9差)と苦しんだ。敗れた5試合のうち4試合のスコアが1-2。いずれも1-1の状況からチャンスをモノにできず逆に失点して競り負けた。
中断明けの第21節・相模原戦(8月31日)から5連勝を飾り、第20-29節まで10戦負けなし(7勝3分)で追い上げ、昇格争いに加わった。新潟から期限付きで加入して第20節から出場したFW平松宗、第21節で先発に抜てきされJ初先発で待望の初得点を挙げたFW大谷駿斗の2人が起爆剤となった。平松のポストプレーと決定力、大谷の抜群のスピードと勢いが加わって前線がパワーアップ。取り組んでいた速い攻めが得点につながるようになり、攻撃のバリエーションがぐっと広がった。
同時に守りの安定感も増した。前半戦で4試合だった無失点が、後半戦は8試合に倍増。GK榎本哲也を中心としたシーズン当初からの積み重ねが成果として表れるようになった。象徴的だったのが0-0で引き分けた第28節・群馬戦。相手の鋭いカウンターアタックを何度もしのいだ。勝負のかかった終盤、速攻からゴールに迫るアタッカーとの1対1をDF脇本晃成が制し、榎本が彼の頭をぽんぽんと叩いてねぎらったシーンが印象深い。榎本は「DFが我慢して対応してくれたらシュートは防げる。伝え続けてきたことがようやくかたちになってきた。今は信頼関係をもってプレーできている」と振り返っていた。
脇本は中断明けの第21節以降にセンターバック(CB)としてスタメンに定着した。安達監督は彼を「ずっとCBでやらせてみたかった。センスがあり、高さも、ボールさばく力もある」とし、その貢献を評価。脇本は「榎本さんの存在はすごく大きかった。哲さんの声掛けを通じて『こう守ればよい』ということが学べた」と話した。
前半戦のゲーム内容の良さを思えば後半戦の猛追も驚きではない。第25節・G大阪U-23戦(10月6日)で5連勝を果たし、5位ながら残り9試合で2位と勝点5差まで迫った。しかし、上位勢も踏ん張ったため追い付くまでには至らなかった。序盤戦から中盤戦にかけての勝点の取りこぼし、勝負所だった上位対決の第26節・熊本戦と第28節・群馬戦での引き分け、第30節・長野戦と第31節・八戸戦での連敗が響いた。
■クラブ力を高める1年に
安達監督の就任以来、果敢に攻め勝つサッカーを目指してきた。その姿はスコアにしっかりと像を結び始め、全16勝のうち1-0は第3節・群馬戦の1試合のみで、残りはすべて2点以上奪ってのものだ。
2点以上奪った試合は15戦全勝。1点止まりだと1勝7分6敗。無得点は5試合で3分2敗。1得点以下の試合が過半数を占めているようではまだ道半ばといえよう。来季も「J2で通用するぐらいにJ3でずば抜けた実力を持つ存在」を目指し、攻撃サッカーを貫く方針。2点、3点と得点を重ねて勝ち切る試合をどこまで増やせるかが成長度を計るポイントになる。
2015年にJ3に降格してから5位、6位、8位、11位と年々順位を下げていたが、今季の躍進によってJ2復帰への道筋が見えた。安達監督の続投が決まり、来季は今季以上に翌年のJ2での戦いさえも見据えた高いレベルのチャレンジがなされるはずだ。
これからはトップチームの現場を支えるクラブ全体の力が問われる局面に入る。チームが機能して好成績を残せば残すほど選手も輝き、個々の評価が当然高まる。今季はMF白石智之、脇本らが他クラブに望まれて移籍することになった。あるべき姿といえる。良い選手を引き留める、あるいは獲得するためには「カターレでプレーしたい」と思わせる魅力的な条件と環境を提示し続けなければならない。それはコーチングスタッフに対してもあてはまる。クラブの魅力とはなにか。もちろん資金力は必要だが、それだけでもないだろう。2020年はJ2復帰をにらみクラブ力を高める1年にもしなければならない。
今季のホームゲーム1試合平均入場者数は2,737人。過去最低だった昨季の2,670人を上回ったものの、ホーム最終戦が長野開催だったことを加味しても寂しい。以前のJ2昇格基準3,000人に届かず、北九州、熊本、群馬、長野、相模原に次ぐリーグ6位にとどまった。また、ユニフォームスポンサーも襟元に北陸電力とYKK APが並び体面を保っているものの、実質胸スポンサー無しの状態がこれで2シーズン続いている。トップチームはもちろん、クラブとしての活動をしっかり伝えて正当な評価を得ていく努力が必要だ。来春には県総合運動公園陸上競技場のピッチ改修が終わり、プレー環境は良化する。ただ、クラブの将来的な発展と繁栄を考えるなら、球技専用スタジアムの整備を目指した何らかのアクションは検討するべきだろう。
J2で戦っていてもおかしくなかった2020年。舞台は再びJ3となったが、クラブに関わる者たちが今季以上の覚悟をもって臨むシーズンになる。プランの進捗は1年遅れとなっても中長期的にみてこれが吉となる可能性はある。カターレがポスト五輪を盛り上げ、地域にムーブメントを巻き起こす1年になってほしい。
※本年もお付き合いいただきありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
昇格した1位・北九州、2位・群馬との勝点差はそれぞれ8、5。直接対決で対北九州が2分、対群馬が1勝1分だったように実力差はほとんどなかった。昇格していてもおかしくないシーズンだった。
■必然の猛追。わずかに届かず
昨季終盤の充実ぶりから期待された通り、開幕から存分にチーム力の高さを発揮した。ゲーム内容は「圧倒的」と形容してもおかしくない水準に達していた。ボールを支配して押し込み、チャンスが多く、ピンチは少ない。この傾向はシーズン通して続き、シュート数434本はリーグ最多。被シュート数231本も同2位と少なく、最少だった藤枝とは1本差だった。
これは安達亮監督が当初想定していた以上の出来だった。しかし一方で、決定機をつくる割に得点数が伸びないのも予想外だった。自縛にかかったように絶好機を逃すシーンも多く、勢いに乗り切れなかった。チームでは「押し込み過ぎて敵がゴール前に密集し、かえって崩しづらい状況を招いている」と判断。5月に入った時点ですでに攻撃のスピードアップを課題として捉えていた。
それでも第10節まで8戦負けなしを記録するなど4勝5分1敗(4位)。第9節・G大阪U-23戦後に監督が「みなさんの人生観を変えるような試合をしてみせる。応援してほしい。ついてきてください」とのメッセージをサポーターに届け、翌節の長野戦(6月2日)をFW田中智大の2ゴールで勝ち今季初の2連勝を飾る。トライし始めた縦に素早い攻めが得点につながり、弾みがついたかに思われた。
しかし、次の第11節・秋田戦(6月9日)でFW中村亮太の2得点に屈する。ここから夏の中断前の第20節・秋田戦(8月11日)までの10試合が2勝3分5敗(第20節終了時10位。2位と勝点9差)と苦しんだ。敗れた5試合のうち4試合のスコアが1-2。いずれも1-1の状況からチャンスをモノにできず逆に失点して競り負けた。
中断明けの第21節・相模原戦(8月31日)から5連勝を飾り、第20-29節まで10戦負けなし(7勝3分)で追い上げ、昇格争いに加わった。新潟から期限付きで加入して第20節から出場したFW平松宗、第21節で先発に抜てきされJ初先発で待望の初得点を挙げたFW大谷駿斗の2人が起爆剤となった。平松のポストプレーと決定力、大谷の抜群のスピードと勢いが加わって前線がパワーアップ。取り組んでいた速い攻めが得点につながるようになり、攻撃のバリエーションがぐっと広がった。
同時に守りの安定感も増した。前半戦で4試合だった無失点が、後半戦は8試合に倍増。GK榎本哲也を中心としたシーズン当初からの積み重ねが成果として表れるようになった。象徴的だったのが0-0で引き分けた第28節・群馬戦。相手の鋭いカウンターアタックを何度もしのいだ。勝負のかかった終盤、速攻からゴールに迫るアタッカーとの1対1をDF脇本晃成が制し、榎本が彼の頭をぽんぽんと叩いてねぎらったシーンが印象深い。榎本は「DFが我慢して対応してくれたらシュートは防げる。伝え続けてきたことがようやくかたちになってきた。今は信頼関係をもってプレーできている」と振り返っていた。
脇本は中断明けの第21節以降にセンターバック(CB)としてスタメンに定着した。安達監督は彼を「ずっとCBでやらせてみたかった。センスがあり、高さも、ボールさばく力もある」とし、その貢献を評価。脇本は「榎本さんの存在はすごく大きかった。哲さんの声掛けを通じて『こう守ればよい』ということが学べた」と話した。
前半戦のゲーム内容の良さを思えば後半戦の猛追も驚きではない。第25節・G大阪U-23戦(10月6日)で5連勝を果たし、5位ながら残り9試合で2位と勝点5差まで迫った。しかし、上位勢も踏ん張ったため追い付くまでには至らなかった。序盤戦から中盤戦にかけての勝点の取りこぼし、勝負所だった上位対決の第26節・熊本戦と第28節・群馬戦での引き分け、第30節・長野戦と第31節・八戸戦での連敗が響いた。
■クラブ力を高める1年に
安達監督の就任以来、果敢に攻め勝つサッカーを目指してきた。その姿はスコアにしっかりと像を結び始め、全16勝のうち1-0は第3節・群馬戦の1試合のみで、残りはすべて2点以上奪ってのものだ。
2点以上奪った試合は15戦全勝。1点止まりだと1勝7分6敗。無得点は5試合で3分2敗。1得点以下の試合が過半数を占めているようではまだ道半ばといえよう。来季も「J2で通用するぐらいにJ3でずば抜けた実力を持つ存在」を目指し、攻撃サッカーを貫く方針。2点、3点と得点を重ねて勝ち切る試合をどこまで増やせるかが成長度を計るポイントになる。
2015年にJ3に降格してから5位、6位、8位、11位と年々順位を下げていたが、今季の躍進によってJ2復帰への道筋が見えた。安達監督の続投が決まり、来季は今季以上に翌年のJ2での戦いさえも見据えた高いレベルのチャレンジがなされるはずだ。
これからはトップチームの現場を支えるクラブ全体の力が問われる局面に入る。チームが機能して好成績を残せば残すほど選手も輝き、個々の評価が当然高まる。今季はMF白石智之、脇本らが他クラブに望まれて移籍することになった。あるべき姿といえる。良い選手を引き留める、あるいは獲得するためには「カターレでプレーしたい」と思わせる魅力的な条件と環境を提示し続けなければならない。それはコーチングスタッフに対してもあてはまる。クラブの魅力とはなにか。もちろん資金力は必要だが、それだけでもないだろう。2020年はJ2復帰をにらみクラブ力を高める1年にもしなければならない。
今季のホームゲーム1試合平均入場者数は2,737人。過去最低だった昨季の2,670人を上回ったものの、ホーム最終戦が長野開催だったことを加味しても寂しい。以前のJ2昇格基準3,000人に届かず、北九州、熊本、群馬、長野、相模原に次ぐリーグ6位にとどまった。また、ユニフォームスポンサーも襟元に北陸電力とYKK APが並び体面を保っているものの、実質胸スポンサー無しの状態がこれで2シーズン続いている。トップチームはもちろん、クラブとしての活動をしっかり伝えて正当な評価を得ていく努力が必要だ。来春には県総合運動公園陸上競技場のピッチ改修が終わり、プレー環境は良化する。ただ、クラブの将来的な発展と繁栄を考えるなら、球技専用スタジアムの整備を目指した何らかのアクションは検討するべきだろう。
J2で戦っていてもおかしくなかった2020年。舞台は再びJ3となったが、クラブに関わる者たちが今季以上の覚悟をもって臨むシーズンになる。プランの進捗は1年遅れとなっても中長期的にみてこれが吉となる可能性はある。カターレがポスト五輪を盛り上げ、地域にムーブメントを巻き起こす1年になってほしい。
※本年もお付き合いいただきありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
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