2017回顧■“三度目の正直”ならず。急失速で好機逸す
- 2017/12/31
- 18:13
前半戦を9勝5分2敗(20得点・9失点)の2位で折り返した。そこまでは良かった。しかし夏の中断明け以降に失速して8位。昨年の6位、一昨年の5位を下回った。後半戦に限った成績は4勝3分9敗(17得点・24失点)で17チーム中14番目。ラスト6試合は1分5敗で終わり方もさみしかった。
■“超戦”掲げ勢いにのる
クラブ初の開幕2連勝を飾り、同3連勝でJ3降格後初めて首位に立った。第10節まで5勝3分2敗で4位。第10節・長野戦(5月28日)での負けを機に、次の相模原戦から椎名伸志をFWで起用して前線のプレスを強めたところ、これがはまって勢いに乗った。第18節まで5勝2分の7戦負けなし。昇格圏内の2位をキープして夏の中断期間に入った。
第13節から中2日であった天皇杯2回戦(6月21日)でも神戸と好勝負を演じている。当時はボールもよくつながり、攻撃の選択肢も増えつつあった。昨季の三浦泰年監督のもとで培ったパスワークと、攻守にわたりゴールに向かっていく今季のサッカーがうまく融合しつつあるようにさえ感じられた。
第15節(7月1日)の北九州戦でDF柳下大樹が終了間際に決勝点を挙げ、クラブ記録を更新するホームゲーム5連勝(第7―15節)を達成。10試合連続得点(第11―21節)もクラブ新記録で、J3降格後ホーム最多入場者数6,383人(第19節・F東京U-23戦)もマーク。“超戦”のスローガン通りに、これまでを超える戦いを展開した。
■中断明けでつまずく
しかし、7月22日の第18節・G大阪U-23戦から4週間の中断期間を境に流れが変わった。再開初戦のFC東京U-23戦(8月19日)で勝利が目前の状況から逆転負け。次節の鹿児島戦では前掛かりになったところを狙われて今季初の連敗を喫した。
前半戦は高い位置からのプレスが効いて、相手陣でプレーする時間が長かった。リードしても追加点を積極的に奪いに行く強気なゲーム運びができたのもこのためだ。だが、連敗をきっかけに、攻守のバランスを崩すようになり、攻め切れず逆にカウンターを浴びてピンチを招くシーンが増えた。
同時に対戦相手もカターレの前線からのプレスを外す方法を考えて実行するようになり、押し込まれるようにもなった。クロスやシュートの被本数が増え、それが失点の増加に直結してしまった。中断期間が明けてから挙げた3勝のうち北九州戦と福島戦も押し込まれる時間が長く、決定機は相手のほうが多かった。体を張って無失点でしのぎ結果をもぎ取ったものの、「相手のシュートミスに助けられた」との見方もできる内容だった。ブロックをつくり我慢する守り方が得意ではなかったのは確かだろう。リーグ終盤ではクロス対応への弱さが露わになり失点が止まらなくなった。
■準備不足否めず
9月以降、代健司や脇本晃成、柳下、夏の補強で獲得した近藤徹志らDF陣にけが人が集中したのは痛恨だった。第29節の相模原戦(10月29日)では出場停止も重なって本職のセンターバックが誰もいなくなり、ぶっつけ本番の3バックで臨まなければならなかった。チーム編成、戦術、フォーメーション、コンディショニング、若手の育成等々、あらゆる面でリスクコントロールや準備が不足していた感は否めない。
前半があまりにもうまくいき過ぎたために備えが遅れたのかもしれない。浮氣哲郎監督は「わたしは守備の選手だったので、本来ならクロス対応の練習は毎週すべきと考えているが、前半戦の当時はまったく問題がなかったので必要性を感じなかった」と振り返る。これは攻撃にも当てはまる。今季はシーズン始めからずっと、シュート練習に多くの時間を割いてきた。「チャンスはつくれる」という前提があったのだろう。しかし、練習してきたクロスからのシュートも実戦ではあまり成果を示せず、チーム状態が悪くなると攻撃パターンの乏しさばかりが目立った。
■終わってみれば完敗
前半戦の選手の頑張りと好調さを思えば、「もったいないシーズンだった」という捉え方はできる。昇格枠が1.5から2に増え、ライバルと目された長野や北九州が前半戦でもたついたのも追い風になるはずだった。第27節の藤枝戦(10月15日)を終えて残り6試合になった時点でも十分に昇格の可能性はあっただけに、優勝した秋田のように停滞期を乗り越えられたらよかったのだが…。そこから4連敗で昇格の望みが消え、1勝も挙げられないままシーズンを終えた。歯止めが利かないほどチーム状態が落ちていたのかもしれないし、そもそも不調を克服するだけの底力や蓄積がなかったのかもしれない。
キャプテンのMF窪田良は、ファンクラブ会報のインタビューで「昨年も終盤は苦戦しましたが、自分たちのサッカーを研究され、相手に対策をとられて難しくなったように感じていました。今年は自分たちから崩れてしまった感じはします」と語っている。
勝敗だけでなくゲーム内容をみても、前半戦の好調さと終盤戦の不振ぶりであまりにも落差が大きい。監督やスタッフ、選手も「まさか」という思いが拭い切れないのではなかろうか。ある選手は「これだけ練習してきたのに最後に何もできなくなるなんて…」と首をかしげていた。筆者自身も、もしも中断明け初戦の大逆転負けがなかったら、もしもその翌節の対戦相手が鹿児島ではなかったら、もしも代選手の負傷離脱がなかったら…、と思う。
しかし、負けを認めなければならない。チームスポーツにおいて、日々鍛錬し個々の成長と組織の成熟を目指してきたにもかかわらずシーズンが進むほど成績が落ち込んだ点を重く受け止めなければならない。終わってみれば順位だけでなく、1試合平均の勝点、得点、失点とも昨年を下回った。カターレより順位が上の7クラブとの対戦成績も2勝4分8敗と大きく負け越している。
■転機を迎え問われる姿勢
クラブは浮氣監督の続投を決めた。2年目は今季に浮き彫りになった多くの課題を克服しなければならない。12月31日現在、トップチームの選手は14人が去り(レンタル延長の馬渡隼暉は含まず)、15人の新規加入(期限付きから完全移籍となった佐々木陽次、佐藤和樹を含む)が決まった。窪田とDF平出涼が移籍を決断し、主力選手も約半数が入れ替わる。チームづくりは一からのスタートになるだろう。
12月28日付けの北日本新聞は北陸電力の会長で、カターレ富山の会長でもある久和進氏が、北電の業績悪化に伴ってカターレへの協賛金支出について「従来通りの対応はできないと考えている」を話し、減額が検討されていると報じている。
クラブとして何を大事にして受け継いでいくのか。何を目指し、どう変わっていくのか。2018年はトップチームだけでなく、クラブとしてもあり方が問われる1年になる。
※カターレの移籍情報まとめ(J’s GOAL)
https://www.jsgoal.jp/transfer/2017/?c=toyama
本年も1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
■“超戦”掲げ勢いにのる
クラブ初の開幕2連勝を飾り、同3連勝でJ3降格後初めて首位に立った。第10節まで5勝3分2敗で4位。第10節・長野戦(5月28日)での負けを機に、次の相模原戦から椎名伸志をFWで起用して前線のプレスを強めたところ、これがはまって勢いに乗った。第18節まで5勝2分の7戦負けなし。昇格圏内の2位をキープして夏の中断期間に入った。
第13節から中2日であった天皇杯2回戦(6月21日)でも神戸と好勝負を演じている。当時はボールもよくつながり、攻撃の選択肢も増えつつあった。昨季の三浦泰年監督のもとで培ったパスワークと、攻守にわたりゴールに向かっていく今季のサッカーがうまく融合しつつあるようにさえ感じられた。
第15節(7月1日)の北九州戦でDF柳下大樹が終了間際に決勝点を挙げ、クラブ記録を更新するホームゲーム5連勝(第7―15節)を達成。10試合連続得点(第11―21節)もクラブ新記録で、J3降格後ホーム最多入場者数6,383人(第19節・F東京U-23戦)もマーク。“超戦”のスローガン通りに、これまでを超える戦いを展開した。
■中断明けでつまずく
しかし、7月22日の第18節・G大阪U-23戦から4週間の中断期間を境に流れが変わった。再開初戦のFC東京U-23戦(8月19日)で勝利が目前の状況から逆転負け。次節の鹿児島戦では前掛かりになったところを狙われて今季初の連敗を喫した。
前半戦は高い位置からのプレスが効いて、相手陣でプレーする時間が長かった。リードしても追加点を積極的に奪いに行く強気なゲーム運びができたのもこのためだ。だが、連敗をきっかけに、攻守のバランスを崩すようになり、攻め切れず逆にカウンターを浴びてピンチを招くシーンが増えた。
同時に対戦相手もカターレの前線からのプレスを外す方法を考えて実行するようになり、押し込まれるようにもなった。クロスやシュートの被本数が増え、それが失点の増加に直結してしまった。中断期間が明けてから挙げた3勝のうち北九州戦と福島戦も押し込まれる時間が長く、決定機は相手のほうが多かった。体を張って無失点でしのぎ結果をもぎ取ったものの、「相手のシュートミスに助けられた」との見方もできる内容だった。ブロックをつくり我慢する守り方が得意ではなかったのは確かだろう。リーグ終盤ではクロス対応への弱さが露わになり失点が止まらなくなった。
■準備不足否めず
9月以降、代健司や脇本晃成、柳下、夏の補強で獲得した近藤徹志らDF陣にけが人が集中したのは痛恨だった。第29節の相模原戦(10月29日)では出場停止も重なって本職のセンターバックが誰もいなくなり、ぶっつけ本番の3バックで臨まなければならなかった。チーム編成、戦術、フォーメーション、コンディショニング、若手の育成等々、あらゆる面でリスクコントロールや準備が不足していた感は否めない。
前半があまりにもうまくいき過ぎたために備えが遅れたのかもしれない。浮氣哲郎監督は「わたしは守備の選手だったので、本来ならクロス対応の練習は毎週すべきと考えているが、前半戦の当時はまったく問題がなかったので必要性を感じなかった」と振り返る。これは攻撃にも当てはまる。今季はシーズン始めからずっと、シュート練習に多くの時間を割いてきた。「チャンスはつくれる」という前提があったのだろう。しかし、練習してきたクロスからのシュートも実戦ではあまり成果を示せず、チーム状態が悪くなると攻撃パターンの乏しさばかりが目立った。
■終わってみれば完敗
前半戦の選手の頑張りと好調さを思えば、「もったいないシーズンだった」という捉え方はできる。昇格枠が1.5から2に増え、ライバルと目された長野や北九州が前半戦でもたついたのも追い風になるはずだった。第27節の藤枝戦(10月15日)を終えて残り6試合になった時点でも十分に昇格の可能性はあっただけに、優勝した秋田のように停滞期を乗り越えられたらよかったのだが…。そこから4連敗で昇格の望みが消え、1勝も挙げられないままシーズンを終えた。歯止めが利かないほどチーム状態が落ちていたのかもしれないし、そもそも不調を克服するだけの底力や蓄積がなかったのかもしれない。
キャプテンのMF窪田良は、ファンクラブ会報のインタビューで「昨年も終盤は苦戦しましたが、自分たちのサッカーを研究され、相手に対策をとられて難しくなったように感じていました。今年は自分たちから崩れてしまった感じはします」と語っている。
勝敗だけでなくゲーム内容をみても、前半戦の好調さと終盤戦の不振ぶりであまりにも落差が大きい。監督やスタッフ、選手も「まさか」という思いが拭い切れないのではなかろうか。ある選手は「これだけ練習してきたのに最後に何もできなくなるなんて…」と首をかしげていた。筆者自身も、もしも中断明け初戦の大逆転負けがなかったら、もしもその翌節の対戦相手が鹿児島ではなかったら、もしも代選手の負傷離脱がなかったら…、と思う。
しかし、負けを認めなければならない。チームスポーツにおいて、日々鍛錬し個々の成長と組織の成熟を目指してきたにもかかわらずシーズンが進むほど成績が落ち込んだ点を重く受け止めなければならない。終わってみれば順位だけでなく、1試合平均の勝点、得点、失点とも昨年を下回った。カターレより順位が上の7クラブとの対戦成績も2勝4分8敗と大きく負け越している。
■転機を迎え問われる姿勢
クラブは浮氣監督の続投を決めた。2年目は今季に浮き彫りになった多くの課題を克服しなければならない。12月31日現在、トップチームの選手は14人が去り(レンタル延長の馬渡隼暉は含まず)、15人の新規加入(期限付きから完全移籍となった佐々木陽次、佐藤和樹を含む)が決まった。窪田とDF平出涼が移籍を決断し、主力選手も約半数が入れ替わる。チームづくりは一からのスタートになるだろう。
12月28日付けの北日本新聞は北陸電力の会長で、カターレ富山の会長でもある久和進氏が、北電の業績悪化に伴ってカターレへの協賛金支出について「従来通りの対応はできないと考えている」を話し、減額が検討されていると報じている。
クラブとして何を大事にして受け継いでいくのか。何を目指し、どう変わっていくのか。2018年はトップチームだけでなく、クラブとしてもあり方が問われる1年になる。
※カターレの移籍情報まとめ(J’s GOAL)
https://www.jsgoal.jp/transfer/2017/?c=toyama
本年も1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
- 関連記事
-
- 【第1節vs琉球プレビュー】いきなり難敵と激突
- 新体制・新加入選手の発表記者会見
- 2017回顧■“三度目の正直”ならず。急失速で好機逸す
- ■今季11敗目を喫し8位で終える
- 【第34節vs琉球プレビュー】沖縄から届け勝利