シーズン回顧(下)“覚悟”省みて飛躍を
- 2016/12/31
- 20:04
2016年の最終成績は13勝10分7敗の勝点49で6位。目標のJ2復帰は果たせなかった。優勝した大分とは勝点差12、2位の栃木とは同10。大分とは負け数が同じだったがカターレは引き分けが多かった。栃木とは直接対決での2敗で差が広がった。
終盤まで昇格争いに絡んだことは評価できる。三浦泰年監督のもと、戦ううえでの拠り所となるスタイルを確立し、戦力に見合う最低限の結果を残した。チームづくりに失敗した過去2年とは大きな違いがある。
今季の勝率.433、1試合当たり勝点1.63、1試合平均得点1.23、同失点0.97はいずれもJリーグ入会後の最高値だ。連続12試合負けなし、8試合連続得点、3試合連続複数得点などのクラブ記録もマークした。また、3点差を後半だけでひっくり返した第22節・YS横浜戦をはじめサポーターを歓喜させる劇的な試合も多かった。結果と内容にハラハラどきどきするスポーツらしい娯楽性を提供したシーズンだった。
難敵を連破した春の大分戦と長野戦、快勝した夏の鳥取戦、大逆転したYS横浜戦など、「今年はもしかすると…」と胸が高鳴る瞬間があった。可能性があっただけに惜しまれる。逃した魚をのちのち悔やむことがないよう新シーズンでの飛躍に期待しよう。
三浦監督はパスをつなぎマイボールのまま攻め切るサッカーを目指した。トレーニングも、ボールを失わず相手を崩す鍛錬に比重が置かれた。攻撃重視だ。栃木や長野のように失点しないことを最優先するサッカーではない。先制点を挙げ追加点を奪うのが目標とすべき理想の勝ちパターンと考え、これを基準にチームの成長を見守った。
ポゼッションサッカーに取り組み始めると、つなぐことが目的化して縦方向への意識が希薄になったり、パスミスからカウンターを浴びて失点がかさんだりするといった問題にぶつかる。三浦監督であっても戦術の浸透、具現化にはある程度の時間が必要だと考えられた。しかし、仕上がりは思った以上に早かった。監督、スタッフの導き、選手たちの能力と意欲のたまものだろう。
序盤戦から、相手よりも長くボールを保持してチャンスの数でも上回るゲームをし、開幕7戦負けなしと結果も伴っていた。第3、5、6節と3試合連続して複数得点を挙げるなどゴールも奪えていた。選手たちは「自分たちのサッカーができれば結果はおのずとついてくる」と口にし、自信が芽生え始めていたように感じる。
しかし、そこから伸び悩んだ。中盤戦以降、対戦相手が対策を講じてくるようになるとチャンスをつくる割に得点が増えず、決定力不足が浮き彫りになってきた。三浦監督は当初、苔口卓也や萱沼優聖ら前線のコンビネーションの向上に期待をかけていたが、8月に大島康樹を期限付き移籍で獲得すると積極的に起用。打開策を模索していた。しかし、昇格争いが佳境に入った第23-25節にも3試合連続無得点に終わるなど答えはでなかった。
今季の総得点は結局リーグ9位タイの37止まり。先制点を奪ったのは13試合しかなく、21試合だった大分と栃木とは差がある。
逆に開始15分以内に先制点を許したのが8試合もあり、失点数9はリーグワースト。そのすべてをセットプレーとカウンターアタックから与えた。その後に挽回して2勝3分3敗と踏ん張っているのも驚きで、力の証明ともいえるが…。3敗が栃木との2試合と第24節のG大阪U-23戦で、いずれも大事なゲームだったのは残念。対照的に大分と栃木は開始15分以内の失点が1と0だった。開始からペースをつかみ、先に得点を挙げて完全に主導権を掌握するだけのレベルには届かなかったといえる。三浦監督は「『攻撃的に』はアタックだけでなく守備や気持ちの面でもキーワードだった。しかし、この得点数と勝点数が物語るように『攻撃的なチームである』と大きな声で言えるまでには至らなかった」と話した。
「選手はまだまだ成長する。時間が必要な部分もある」と三浦監督は続投への意欲を示していたが道半ばで退任。「富山で出会ったみなさんには情熱的な人が多かった。富山の地とカターレには可能性がある。『富山なんて』と卑下せず頑張ってほしい」とエールを残して当地を去った。来季は得点力アップのためにどんな考えがあったのだろうか。続きを見たくもあったが、クラブは変化を求めて監督交代を決断した。主力選手の慰留に努めており、今季のチームをベースに戦力の上積みを図っている。
今季は「J2復帰という唯一最大のミッションをなんとしても達成する」(酒井英治社長)とし、スローガンに「覚悟」を掲げた。クラブとしての取り組みを省みて来季に生かさなければならないだろう。ホームゲームの平均観客数は3608人で、過去最低だった前年より788人増。しかし、J2経験のない長野、相模原、鹿児島より少なく、J3で6番目だった。
現状でJ2ライセンスの有無という差はあるもののJ3の各クラブがカターレと同様に郷土の代表として上を目指している。J3の中でさえ競争力を維持していくことはたやすくない。2017年はクラブ発足10シーズン目になる。自らの存在意義や強み、どんなクラブとして認められたいのか、といった原点を見つめ直し、地域に力強いメッセージを発してほしい。
(おわり)
終盤まで昇格争いに絡んだことは評価できる。三浦泰年監督のもと、戦ううえでの拠り所となるスタイルを確立し、戦力に見合う最低限の結果を残した。チームづくりに失敗した過去2年とは大きな違いがある。
今季の勝率.433、1試合当たり勝点1.63、1試合平均得点1.23、同失点0.97はいずれもJリーグ入会後の最高値だ。連続12試合負けなし、8試合連続得点、3試合連続複数得点などのクラブ記録もマークした。また、3点差を後半だけでひっくり返した第22節・YS横浜戦をはじめサポーターを歓喜させる劇的な試合も多かった。結果と内容にハラハラどきどきするスポーツらしい娯楽性を提供したシーズンだった。
難敵を連破した春の大分戦と長野戦、快勝した夏の鳥取戦、大逆転したYS横浜戦など、「今年はもしかすると…」と胸が高鳴る瞬間があった。可能性があっただけに惜しまれる。逃した魚をのちのち悔やむことがないよう新シーズンでの飛躍に期待しよう。
三浦監督はパスをつなぎマイボールのまま攻め切るサッカーを目指した。トレーニングも、ボールを失わず相手を崩す鍛錬に比重が置かれた。攻撃重視だ。栃木や長野のように失点しないことを最優先するサッカーではない。先制点を挙げ追加点を奪うのが目標とすべき理想の勝ちパターンと考え、これを基準にチームの成長を見守った。
ポゼッションサッカーに取り組み始めると、つなぐことが目的化して縦方向への意識が希薄になったり、パスミスからカウンターを浴びて失点がかさんだりするといった問題にぶつかる。三浦監督であっても戦術の浸透、具現化にはある程度の時間が必要だと考えられた。しかし、仕上がりは思った以上に早かった。監督、スタッフの導き、選手たちの能力と意欲のたまものだろう。
序盤戦から、相手よりも長くボールを保持してチャンスの数でも上回るゲームをし、開幕7戦負けなしと結果も伴っていた。第3、5、6節と3試合連続して複数得点を挙げるなどゴールも奪えていた。選手たちは「自分たちのサッカーができれば結果はおのずとついてくる」と口にし、自信が芽生え始めていたように感じる。
しかし、そこから伸び悩んだ。中盤戦以降、対戦相手が対策を講じてくるようになるとチャンスをつくる割に得点が増えず、決定力不足が浮き彫りになってきた。三浦監督は当初、苔口卓也や萱沼優聖ら前線のコンビネーションの向上に期待をかけていたが、8月に大島康樹を期限付き移籍で獲得すると積極的に起用。打開策を模索していた。しかし、昇格争いが佳境に入った第23-25節にも3試合連続無得点に終わるなど答えはでなかった。
今季の総得点は結局リーグ9位タイの37止まり。先制点を奪ったのは13試合しかなく、21試合だった大分と栃木とは差がある。
逆に開始15分以内に先制点を許したのが8試合もあり、失点数9はリーグワースト。そのすべてをセットプレーとカウンターアタックから与えた。その後に挽回して2勝3分3敗と踏ん張っているのも驚きで、力の証明ともいえるが…。3敗が栃木との2試合と第24節のG大阪U-23戦で、いずれも大事なゲームだったのは残念。対照的に大分と栃木は開始15分以内の失点が1と0だった。開始からペースをつかみ、先に得点を挙げて完全に主導権を掌握するだけのレベルには届かなかったといえる。三浦監督は「『攻撃的に』はアタックだけでなく守備や気持ちの面でもキーワードだった。しかし、この得点数と勝点数が物語るように『攻撃的なチームである』と大きな声で言えるまでには至らなかった」と話した。
「選手はまだまだ成長する。時間が必要な部分もある」と三浦監督は続投への意欲を示していたが道半ばで退任。「富山で出会ったみなさんには情熱的な人が多かった。富山の地とカターレには可能性がある。『富山なんて』と卑下せず頑張ってほしい」とエールを残して当地を去った。来季は得点力アップのためにどんな考えがあったのだろうか。続きを見たくもあったが、クラブは変化を求めて監督交代を決断した。主力選手の慰留に努めており、今季のチームをベースに戦力の上積みを図っている。
今季は「J2復帰という唯一最大のミッションをなんとしても達成する」(酒井英治社長)とし、スローガンに「覚悟」を掲げた。クラブとしての取り組みを省みて来季に生かさなければならないだろう。ホームゲームの平均観客数は3608人で、過去最低だった前年より788人増。しかし、J2経験のない長野、相模原、鹿児島より少なく、J3で6番目だった。
現状でJ2ライセンスの有無という差はあるもののJ3の各クラブがカターレと同様に郷土の代表として上を目指している。J3の中でさえ競争力を維持していくことはたやすくない。2017年はクラブ発足10シーズン目になる。自らの存在意義や強み、どんなクラブとして認められたいのか、といった原点を見つめ直し、地域に力強いメッセージを発してほしい。
(おわり)
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