シーズン総括(上) 遠かった昇格
- 2015/12/10
- 16:36
カターレ富山はJ3降格から1年でのJ2復帰を目指したが5位に終わった。通算14勝10分12敗で勝点52。序盤でつまずき昇格争いに加わることさえできなかった。昇格を果たした1位・山口、2位・町田が勝点78でその差は同26。掲げた目標を基準に考えれば惨敗といえる成績だ。
■中位相手に3勝5分4敗
負け惜しみになるが、確かに接戦で勝点を取りこぼした試合は多い。個人的な見解だが、第4節・町田戦、第8節・相模原戦をはじめ運び方次第で勝点3まで望めた負け試合が控えめにみても8つ(第2、4、8、13、14、18、23、24節)、勝てたかもしれない引き分けが2つ(第15、21節)ある。これらの負けを引き分け以上に、引き分けを勝ちにできていたらかなりの勝点が上積みできた。山口、町田との直接対決の内容をみても何かが決定的に劣っている印象はなく、かなわないとは感じなかった。
しかし、結果が示す現実は厳しい。今季のJ3は1-4位、5-9位、10-13位の3グループ(G)にはっきりとした勝点差ができた。カターレは上位Gに対して2勝2分8敗、中位Gには3勝5分4敗、下位Gには9勝3分。上位に歯が立たず、中位にも苦戦し、下位から勝点を稼いで5位に滑り込んだ姿が浮かび上がる。
総得点37は秋田、藤枝と並びリーグ8位タイ、総失点は36で同3位タイ、得失点差+1は同6位。得点力を欠き、守りも鉄壁とまではいえないため、全36試合で先制点を奪えたのは13に過ぎない(11勝1分1敗)。0-0のドローが5試合あり、先制された18試合は3勝4分11敗だった。5位は妥当な位置だと認めなければならない。
■圧倒目指すが山口戦で挫折
当初、岸野靖之監督のチームづくりは順調にみえた。意識改革も狙ったハードなフィジカルトレーニングに選手たちは意欲的に取り組んでいた。その姿に監督も敬意を表し「富山の選手はまじめに一生懸命に取り組むから必ず良くなる。課題はそのスピードを上げることだ」と話した。開幕1週前のトレーニングマッチでは長野に逆転勝ちを収めた。選手は「走り勝つことができた」「J3の相手には隙を感じた」などと口にし、チームとしてある程度の手ごたえをもって初戦を迎えた。
しかし、開幕戦こそ勝利で飾ったが、そこから4戦未勝利(1分3敗)。ハイプレスとパスワークで相手を圧倒する戦い方を目指したが、なかなか得点を奪えず逆に攻守のバランスを崩して失点した。退場者を出した第2節・鳥取戦、退場で1人少ない町田に勝ち越し点を許した第4節では未熟さが露わになった。
そして真っ向勝負を挑んだ第6節・山口戦でことごとくプレスを外されて完敗を喫し、岸野監督は戦術変更を決断する。長いボールでシンプルに前線のスピードとパワーを生かし、カウンターを浴びるリスクも抑える戦い方にシフトした。ここから第9節・長野戦以降の3連勝を含み第12節・琉球戦まで4勝1分1敗と持ち直した。
■徐々に上向くも天皇杯敗退で終止符
だが、第13節・福島戦ではその戦術が極端に振れ、蹴るだけの単調な攻撃に終始する。今季ワーストに近い内容で敗れた。行き詰まりを感じた岸野監督は、次の第14節・長野戦からは再びボールをつなぐ意識を高めた戦いを指示。これ以降の第2クールはブロックディフェンスと縦に素早い攻めを基本に据えながら組織の成熟を目指した。7月には「徐々にチーム全体として動けるようになってきた」と指揮官も前向きな評価を与えるようなったが勝点は伸びない。この間の第24節・町田戦まで2勝4分4敗と足踏みしたことで昇格は絶望的になった。
8月半ばの第25節・盛岡戦、第26節・鳥取戦ではともに終了間際に決勝点を挙げるしぶとさをみせた。ようやく岸野イズムが結果につながり始めたかに思われたが、同月23日、天皇杯県予選でPK戦の末に新庄に敗れる。同27日に監督交代が発表された。
■結果と自信の好循環生まれず
「チームとしての戦い方が構築できず、選手の能力をフルに発揮させられなかった」と澤入重雄ゼネラルマネジャーはシーズンを総括する。
同じように振り返る選手は少なくない。キャプテンのMF森泰次郎は昇格の可能性が消えた第32節・秋田戦後に「最後まで自分たちのスタイルが定まらなかった。やろうとしているサッカーについて、誰かに尋ねられても答えるのが難しいような感じだった。内容はどうであれ勝つためにどうするかという部分ではっきりしなかった」と話した。MF朝日大輔は「個々が劣っていたとは思わない。(J3得点王の)山口の岸田君にコケ(苔口)は負けていない。ただ、山口は全員がイメージを共有して戦っていた」と語っている。
岸野監督が、勝つためにより現実的で可能性のある戦い方をその都度選んでいたのは間違いない。どこかの時点で、1つの勝利、1つのゴールによってチームの歯車がかみ合い始めていたら、また異なる展開もあり得ただろう。結果を残しながら戦術が固まり、選手の自信も深まるという好循環をつくれなかった点で昨季と重なる。しかし、現実はチームづくりに手間取り、早めたかったはずの成長は間に合わなかった。
◇
カターレ富山のトップチームは6日のトレーニングで今季の活動を終えました。
3回に分けて2015年シーズンを振り返ります。
■中位相手に3勝5分4敗
負け惜しみになるが、確かに接戦で勝点を取りこぼした試合は多い。個人的な見解だが、第4節・町田戦、第8節・相模原戦をはじめ運び方次第で勝点3まで望めた負け試合が控えめにみても8つ(第2、4、8、13、14、18、23、24節)、勝てたかもしれない引き分けが2つ(第15、21節)ある。これらの負けを引き分け以上に、引き分けを勝ちにできていたらかなりの勝点が上積みできた。山口、町田との直接対決の内容をみても何かが決定的に劣っている印象はなく、かなわないとは感じなかった。
しかし、結果が示す現実は厳しい。今季のJ3は1-4位、5-9位、10-13位の3グループ(G)にはっきりとした勝点差ができた。カターレは上位Gに対して2勝2分8敗、中位Gには3勝5分4敗、下位Gには9勝3分。上位に歯が立たず、中位にも苦戦し、下位から勝点を稼いで5位に滑り込んだ姿が浮かび上がる。
総得点37は秋田、藤枝と並びリーグ8位タイ、総失点は36で同3位タイ、得失点差+1は同6位。得点力を欠き、守りも鉄壁とまではいえないため、全36試合で先制点を奪えたのは13に過ぎない(11勝1分1敗)。0-0のドローが5試合あり、先制された18試合は3勝4分11敗だった。5位は妥当な位置だと認めなければならない。
■圧倒目指すが山口戦で挫折
当初、岸野靖之監督のチームづくりは順調にみえた。意識改革も狙ったハードなフィジカルトレーニングに選手たちは意欲的に取り組んでいた。その姿に監督も敬意を表し「富山の選手はまじめに一生懸命に取り組むから必ず良くなる。課題はそのスピードを上げることだ」と話した。開幕1週前のトレーニングマッチでは長野に逆転勝ちを収めた。選手は「走り勝つことができた」「J3の相手には隙を感じた」などと口にし、チームとしてある程度の手ごたえをもって初戦を迎えた。
しかし、開幕戦こそ勝利で飾ったが、そこから4戦未勝利(1分3敗)。ハイプレスとパスワークで相手を圧倒する戦い方を目指したが、なかなか得点を奪えず逆に攻守のバランスを崩して失点した。退場者を出した第2節・鳥取戦、退場で1人少ない町田に勝ち越し点を許した第4節では未熟さが露わになった。
そして真っ向勝負を挑んだ第6節・山口戦でことごとくプレスを外されて完敗を喫し、岸野監督は戦術変更を決断する。長いボールでシンプルに前線のスピードとパワーを生かし、カウンターを浴びるリスクも抑える戦い方にシフトした。ここから第9節・長野戦以降の3連勝を含み第12節・琉球戦まで4勝1分1敗と持ち直した。
■徐々に上向くも天皇杯敗退で終止符
だが、第13節・福島戦ではその戦術が極端に振れ、蹴るだけの単調な攻撃に終始する。今季ワーストに近い内容で敗れた。行き詰まりを感じた岸野監督は、次の第14節・長野戦からは再びボールをつなぐ意識を高めた戦いを指示。これ以降の第2クールはブロックディフェンスと縦に素早い攻めを基本に据えながら組織の成熟を目指した。7月には「徐々にチーム全体として動けるようになってきた」と指揮官も前向きな評価を与えるようなったが勝点は伸びない。この間の第24節・町田戦まで2勝4分4敗と足踏みしたことで昇格は絶望的になった。
8月半ばの第25節・盛岡戦、第26節・鳥取戦ではともに終了間際に決勝点を挙げるしぶとさをみせた。ようやく岸野イズムが結果につながり始めたかに思われたが、同月23日、天皇杯県予選でPK戦の末に新庄に敗れる。同27日に監督交代が発表された。
■結果と自信の好循環生まれず
「チームとしての戦い方が構築できず、選手の能力をフルに発揮させられなかった」と澤入重雄ゼネラルマネジャーはシーズンを総括する。
同じように振り返る選手は少なくない。キャプテンのMF森泰次郎は昇格の可能性が消えた第32節・秋田戦後に「最後まで自分たちのスタイルが定まらなかった。やろうとしているサッカーについて、誰かに尋ねられても答えるのが難しいような感じだった。内容はどうであれ勝つためにどうするかという部分ではっきりしなかった」と話した。MF朝日大輔は「個々が劣っていたとは思わない。(J3得点王の)山口の岸田君にコケ(苔口)は負けていない。ただ、山口は全員がイメージを共有して戦っていた」と語っている。
岸野監督が、勝つためにより現実的で可能性のある戦い方をその都度選んでいたのは間違いない。どこかの時点で、1つの勝利、1つのゴールによってチームの歯車がかみ合い始めていたら、また異なる展開もあり得ただろう。結果を残しながら戦術が固まり、選手の自信も深まるという好循環をつくれなかった点で昨季と重なる。しかし、現実はチームづくりに手間取り、早めたかったはずの成長は間に合わなかった。
◇
カターレ富山のトップチームは6日のトレーニングで今季の活動を終えました。
3回に分けて2015年シーズンを振り返ります。
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