■新シーズンを前に
- 2023/02/09
- 18:41
カターレ富山は3月5日のJ3開幕戦に向けて高知市で練習を積んでいます。
小田切道治監督が引き続き指揮を執り、選手も約3分の2が昨季からの在籍者ですから、「今季こそJ2復帰」との意気込みは例年以上。指揮官が掲げる「アグレッシブにボールを奪いにいき、攻撃的で躍動感のあるサッカー」を具現化させて栄冠をつかんでほしいと思います。都合により遅くなりましたが、2022年のシーズン回顧を掲載しました。新シーズンが始まる前に、今季のチームの出発点ともなっている昨季の戦いを振り返ります。
【2022シーズン回顧■地力は示して来季こそ】
Jリーグ参入14年目、J3で8年目の2022年は勝点60(19勝3分12敗)の6位。終盤まで昇格争いに絡んで実力を示したが、2位と勝点7差で悲願はかなわなかった。
14年以来となるJ2復帰を目標に掲げ、周囲からも結果を求められている。石﨑信弘監督が就任2年目に入り、クラブも赤字覚悟でJ3上位水準のチーム人件費を確保して臨んだ。「昇格を逃した」と総括されるのはやむを得ないかもしれない。
だが、昇格の望みを残して最後まで戦い、多くの人を楽しませた。終盤まで昇格を争うのはこれで4年連続。毎年必ず昇格候補のいくつかがシーズン早々に脱落することを考えると、この安定感は誇ってよい。チーム力、クラブ力のたまものだろう。22年は序盤の足踏みや途中の監督交代もありながら上位に踏みとどまった。この点は押さえておきたい。
序盤戦でのつまずきは痛かった。開幕の愛媛戦は苦しみながらもFW大野耀平の2得点で逆転勝ち(2○1)。しかし、続く第2節・今治戦(1●2)、第3節・北九州戦(1●2)を競り負けた。第4節・いわき戦を辛くも引き分け(1△1)、第5節・岐阜戦は完敗(1●3)。難敵が続いたとはいえ、1勝1分3敗のスタートに。これを重く受け止めた左伴繁雄社長が、今後への決意を示す声明を発表する事態となった。
ここで持ちこたえて石﨑体制で培った底力を示した。翌週の第6節・藤枝戦、初めて先発に起用されたFW吉平翼とMF碓井鉄平を先頭にハイプレスを敢行して2-0で快勝。これを境に戦いが軌道に乗り、5月15日の第10節・YS横浜戦(5○1)からクラブ記録を更新する6連勝を飾って4位まで浮上、首位・鹿児島に勝点1差に迫った。前年と同じく前半戦を首位で折り返す可能性もあったが、ヤマ場となった第16節・松本戦は0-1で競り負けて、1巡目の対戦を10勝2分5敗の5位で終えた。この6連勝を起点にしてホームゲーム11戦負けなし(第7~27節/10勝1分)のクラブ新記録も樹立されている。
6連勝中は1-0で5連勝したように守りの粘り強さが光った。相手の反撃に対して押し込まれる時間も長かったが、隙のないクロス対応や体を張ったシュートブロックでゴールを許さず、石﨑監督による守備強化の成果が表れていた。
しかし、指揮官はゲーム内容にもの足りなさを感じていた。前年の堅守速攻をベースに今季は攻撃力アップを目指していたが、序盤の苦戦をきっかけに守備重視への回帰を余儀なくされた。「(勝てないことによって)自信を失ってしまうのは避けたかった。しかし、やろうとしていることを貫いてチームを良くしていくという方法もある。(今は結果が出ていても)どちらが良かったのかは分からないね」と当時語っている。
夏以降、攻撃のバリエーションを増やし、連係を向上させるためのトレーニングに時間を割いたが、効果が表れるまでに時間がかかった。新型コロナウイルス感染や負傷による離脱もあった。コンディションが整ってようやく能力を発揮し始めていたMFアルトゥール・シルバが、初めてフル出場した第18節・YS横浜戦(2○1)直後に戦列を離れたのも痛かっただろう。組織としての成熟、新戦力の台頭といったチーム力の上積みを欠いたのは否めない。
9月17日の第25節・沼津戦の負け(0●1)が引き金となり、石﨑監督の退任と小田切道治ヘッドコーチの監督昇格が決まった。沼津戦はゲーム内容が悪かった。それでも、このタイミングでの監督交代は多くの人が予想していなかったのではないか。知らせを聞いて驚いた。
この決断には上位争いの情勢も影響している。戦績は下降気味だったとはいえ、後半戦に入っても4勝1分3敗(開幕から14勝3分8敗)。だが、この時点では首位・いわきと2位の鹿児島が順調に勝点を伸ばしており、残り9試合での2位との勝点8差が非常に大きく感じられた。フロントは逆転昇格への望みを監督交代という劇薬に賭けたかたちとなった。しかし、終わってみれば、「昇格争いは何が起こるか分からない。いずれにせよ最終戦で決まるじゃろ」との石﨑監督の言葉通りに、いわきを除く上位勢はすべて終盤で苦戦し、ラスト5試合の結果次第ではどこにもチャンスがあった。石﨑体制ならどんな展開が待っていたのだろう。それも見てみたかったなとの思いは残った。
その後の選手、スタッフの頑張りは3連勝をはじめとする5勝4敗の成績と、1試合平均2.2得点(同2.0失点/第25節まで平均1.4得点・同1.2失点)を叩き出したアグレッシブで攻撃的なゲーム内容が示す通り。小田切監督は短期間でチームに変化をもたらし、MF松岡大智、FWマテウス・レイリアをはじめ抜てきされた選手たちも活躍して選手層の厚さ、戦力値の高さが証明された。
石﨑前監督が説き続けた「最後まであきらめずに戦い抜く」という姿勢は教訓として継承しなければならない。天王山となった10月16日の第29節・藤枝戦の完敗(1●4)はショッキングだったが、それと同等に次節・八戸戦(1●2)、次々節・今治戦(2●3)の惜敗が痛恨だった。90分間の試合においても、1年にわたる長いシーズンにおいても、逆境に屈しないタフさを求めて新シーズンがスタートしている。
ホームゲームの1試合平均入場者数は2,872人でリーグ7番目だった。コロナ禍前の19年の2,727人、前年の2,780人を上回ったもののほぼ同水準。
左伴社長のもと、経営改革は進んでおり、営業収益は21年度の6億2千7百万円を上回り、J2時代の14年度の7億3千5百万円に近づく数字になる見込み。収支は赤字となるため新年度はコスト削減にも力を入れる。第三者割当増資を実施して資本金を9,650万円から1億3,850万円に積み増し、併せて新規株主を募って株主は8増の40社に。トップチームの成績などによる年度ごとの収益の増減に耐え得る体制づくりと、多くの地元企業・県民に支えられた真の県民クラブを目指すのが狙い。
介護福祉施設のお年寄りに応援を楽しんでもらう地域貢献活動「ビーサポーターズ」が「2022Jリーグシャレン!アウォーズ」を受賞して注目を集めたほか、シーズン後にはトップチームの胸スポンサーにYKK APが復帰することが発表された。
<過去のシーズン回顧一覧>
【2021シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-1254.html
【2020シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-1121.html
【2019シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-938.html
【2018シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-751.html
【2017シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-594.html
【2016シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-430.html
【2015シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-228.html
小田切道治監督が引き続き指揮を執り、選手も約3分の2が昨季からの在籍者ですから、「今季こそJ2復帰」との意気込みは例年以上。指揮官が掲げる「アグレッシブにボールを奪いにいき、攻撃的で躍動感のあるサッカー」を具現化させて栄冠をつかんでほしいと思います。都合により遅くなりましたが、2022年のシーズン回顧を掲載しました。新シーズンが始まる前に、今季のチームの出発点ともなっている昨季の戦いを振り返ります。
【2022シーズン回顧■地力は示して来季こそ】
Jリーグ参入14年目、J3で8年目の2022年は勝点60(19勝3分12敗)の6位。終盤まで昇格争いに絡んで実力を示したが、2位と勝点7差で悲願はかなわなかった。
14年以来となるJ2復帰を目標に掲げ、周囲からも結果を求められている。石﨑信弘監督が就任2年目に入り、クラブも赤字覚悟でJ3上位水準のチーム人件費を確保して臨んだ。「昇格を逃した」と総括されるのはやむを得ないかもしれない。
だが、昇格の望みを残して最後まで戦い、多くの人を楽しませた。終盤まで昇格を争うのはこれで4年連続。毎年必ず昇格候補のいくつかがシーズン早々に脱落することを考えると、この安定感は誇ってよい。チーム力、クラブ力のたまものだろう。22年は序盤の足踏みや途中の監督交代もありながら上位に踏みとどまった。この点は押さえておきたい。
序盤戦でのつまずきは痛かった。開幕の愛媛戦は苦しみながらもFW大野耀平の2得点で逆転勝ち(2○1)。しかし、続く第2節・今治戦(1●2)、第3節・北九州戦(1●2)を競り負けた。第4節・いわき戦を辛くも引き分け(1△1)、第5節・岐阜戦は完敗(1●3)。難敵が続いたとはいえ、1勝1分3敗のスタートに。これを重く受け止めた左伴繁雄社長が、今後への決意を示す声明を発表する事態となった。
ここで持ちこたえて石﨑体制で培った底力を示した。翌週の第6節・藤枝戦、初めて先発に起用されたFW吉平翼とMF碓井鉄平を先頭にハイプレスを敢行して2-0で快勝。これを境に戦いが軌道に乗り、5月15日の第10節・YS横浜戦(5○1)からクラブ記録を更新する6連勝を飾って4位まで浮上、首位・鹿児島に勝点1差に迫った。前年と同じく前半戦を首位で折り返す可能性もあったが、ヤマ場となった第16節・松本戦は0-1で競り負けて、1巡目の対戦を10勝2分5敗の5位で終えた。この6連勝を起点にしてホームゲーム11戦負けなし(第7~27節/10勝1分)のクラブ新記録も樹立されている。
6連勝中は1-0で5連勝したように守りの粘り強さが光った。相手の反撃に対して押し込まれる時間も長かったが、隙のないクロス対応や体を張ったシュートブロックでゴールを許さず、石﨑監督による守備強化の成果が表れていた。
しかし、指揮官はゲーム内容にもの足りなさを感じていた。前年の堅守速攻をベースに今季は攻撃力アップを目指していたが、序盤の苦戦をきっかけに守備重視への回帰を余儀なくされた。「(勝てないことによって)自信を失ってしまうのは避けたかった。しかし、やろうとしていることを貫いてチームを良くしていくという方法もある。(今は結果が出ていても)どちらが良かったのかは分からないね」と当時語っている。
夏以降、攻撃のバリエーションを増やし、連係を向上させるためのトレーニングに時間を割いたが、効果が表れるまでに時間がかかった。新型コロナウイルス感染や負傷による離脱もあった。コンディションが整ってようやく能力を発揮し始めていたMFアルトゥール・シルバが、初めてフル出場した第18節・YS横浜戦(2○1)直後に戦列を離れたのも痛かっただろう。組織としての成熟、新戦力の台頭といったチーム力の上積みを欠いたのは否めない。
9月17日の第25節・沼津戦の負け(0●1)が引き金となり、石﨑監督の退任と小田切道治ヘッドコーチの監督昇格が決まった。沼津戦はゲーム内容が悪かった。それでも、このタイミングでの監督交代は多くの人が予想していなかったのではないか。知らせを聞いて驚いた。
この決断には上位争いの情勢も影響している。戦績は下降気味だったとはいえ、後半戦に入っても4勝1分3敗(開幕から14勝3分8敗)。だが、この時点では首位・いわきと2位の鹿児島が順調に勝点を伸ばしており、残り9試合での2位との勝点8差が非常に大きく感じられた。フロントは逆転昇格への望みを監督交代という劇薬に賭けたかたちとなった。しかし、終わってみれば、「昇格争いは何が起こるか分からない。いずれにせよ最終戦で決まるじゃろ」との石﨑監督の言葉通りに、いわきを除く上位勢はすべて終盤で苦戦し、ラスト5試合の結果次第ではどこにもチャンスがあった。石﨑体制ならどんな展開が待っていたのだろう。それも見てみたかったなとの思いは残った。
その後の選手、スタッフの頑張りは3連勝をはじめとする5勝4敗の成績と、1試合平均2.2得点(同2.0失点/第25節まで平均1.4得点・同1.2失点)を叩き出したアグレッシブで攻撃的なゲーム内容が示す通り。小田切監督は短期間でチームに変化をもたらし、MF松岡大智、FWマテウス・レイリアをはじめ抜てきされた選手たちも活躍して選手層の厚さ、戦力値の高さが証明された。
石﨑前監督が説き続けた「最後まであきらめずに戦い抜く」という姿勢は教訓として継承しなければならない。天王山となった10月16日の第29節・藤枝戦の完敗(1●4)はショッキングだったが、それと同等に次節・八戸戦(1●2)、次々節・今治戦(2●3)の惜敗が痛恨だった。90分間の試合においても、1年にわたる長いシーズンにおいても、逆境に屈しないタフさを求めて新シーズンがスタートしている。
ホームゲームの1試合平均入場者数は2,872人でリーグ7番目だった。コロナ禍前の19年の2,727人、前年の2,780人を上回ったもののほぼ同水準。
左伴社長のもと、経営改革は進んでおり、営業収益は21年度の6億2千7百万円を上回り、J2時代の14年度の7億3千5百万円に近づく数字になる見込み。収支は赤字となるため新年度はコスト削減にも力を入れる。第三者割当増資を実施して資本金を9,650万円から1億3,850万円に積み増し、併せて新規株主を募って株主は8増の40社に。トップチームの成績などによる年度ごとの収益の増減に耐え得る体制づくりと、多くの地元企業・県民に支えられた真の県民クラブを目指すのが狙い。
介護福祉施設のお年寄りに応援を楽しんでもらう地域貢献活動「ビーサポーターズ」が「2022Jリーグシャレン!アウォーズ」を受賞して注目を集めたほか、シーズン後にはトップチームの胸スポンサーにYKK APが復帰することが発表された。
<過去のシーズン回顧一覧>
【2021シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-1254.html
【2020シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-1121.html
【2019シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-938.html
【2018シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-751.html
【2017シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-594.html
【2016シーズン回顧】
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【2015シーズン回顧】
http://kataller2015.jp/blog-entry-228.html