■左伴繁雄・次期社長会見★質疑応答
- 2021/03/04
- 22:14
Q:J2昇格のために必要なポイントを3つ先に挙げた。現状での強みはあるか。
カターレ富山のクラブとしてのパフォーマンスはまだPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)、イヤーブックなどに目を通した程度なので把握できていません。昨夜、富山に来たばかりですから。J2復帰を目指すうえで、みなさんに「ここが良いんだ」と自信を持って話せる段階ではありません。
ただ、ひとつ言えるのはスタッフにくせのない人が多いという印象を持ちました。左伴というのはどちらかといえば管理屋。日産自動車時代から製造現場の管理をやってきたのもあって、「数字に置き換えて目に見える管理をしろ」とか、「メディア対応も含めて情報開示をちゃんとやりなさい」「それを誰もができるように業務を標準化しなさい」、さらに「デジタル化をちゃんとしてモダナイズしなさい」といった要求をする。(サッカー界も)競争社会なので、他のクラブの状況を知り比較するために、「スポンサー数や1社当たりの単価はどれぐらいなのか」「勝点1を得るためにいくら投資した計算になるのか勝点効率を調べてみろ」とも言う。そういった具合にやると、組織内には「そんなのやらなくても…」といったフリクション(摩擦)が結構でてくるものです。しかし、カターレには「今すぐやってみます」と言ってくれる社員が多くいるように思いました。素直な方が多いと会社の成長ピッチは上がっていく。少なくとも右肩上がりにはなりやすいと思っています。
Q:カターレは発足以来、株主企業の出身者が社長を務めてきた。スポーツビジネスのプロ経営者として招かれたかたちだ。
清水エスパルスも歴代の社長は(株主である)鈴与から派遣されていましたが、鈴与の会長である鈴木與平さんからオファーをいただき2015年に社長に就きました。サッカーは好きでもスポーツビジネスを知らずに経営してきてトップライン(営業収益)もそれほど伸びていない。スポンサー数も増えていないし、チームもそう強くない。自分たちはエスパルスを通じて地域のみなさんに喜んでもらおうと一肌脱いでお金も社長も出してきたけれど喜んでもらえていないのではないか。もっと喜んでもらうために、そのためのノウハウや手法を持っていそうな、経験のある左伴に任せようというのが與平さんの考えでした。カターレも同じだと思います。
例えば、サポーターは仲間であり、身内ですが、クラブが本当に困った時に「チケットを値上げする。それでも買ってくれ」とお願いして納得してもらえるだけの信頼関係を築かなければいけない。出向のようなかたちで短期で交代してしまうのでは、サポーターと肩は組めても、そこまで関係を深めるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
また、わたしはフリーであり、独立した立場で仕事をしているので、必要があれば口幅ったいこともストレートに言います。例えばスポンサー営業の際も「ある企業からは『地域のみなさんが喜んでくれたらそれでよい』という考えで協賛をいただいている。素晴らしいと思いませんか。御社はどうですか」と啖呵を切ることがあります。だから時には嫌われる。「外様のくせに」と言われたことも何度もあります。しかし、それでクラブが大きくなり、優勝や昇格を果たすこともできました。よそものだからこそ、客観的に「ここはもっと頑張らなければいけない」ときちんと言えます。そういったことを実は分かっていて言いたかったのはクラブのスタッフや選手、サポーターであるケースが少なくありません。ですから最終的にはクラブのスタッフや選手、サポーターがわたしを守ってくれました。以上のような点はこれまでとは違うかもしれません。
Q:地域とクラブの潜在能力を高く評価している。
カターレの現在の株主構成や富山のみなさんのスポーツに対する造詣の深さ、地元愛、街としての財力などを考えると、ポテンシャルはJ1クラスだと思います。バスケットはグラウジーズがB1で頑張っていますね。株主企業のトップライン(売上高/営業収益)の合計ならJ1でも上位クラスです。それぐらいまで上がっていける青写真はつくれるんじゃないかと思っています。「なんでJ3にいるんだろう」と感じるぐらいです。
Q:BtoB(企業間取引)を主とする製造業が多いのが富山の土地柄。日産自動車でモノづくりに携わった経験から、そういった企業にスポーツに目を向けてもらうためにはどうすればよいと考えるか。スポーツとモノづくりには共通点もあるように思うのだが。
スポンサー営業に王道はありません。僕もモノづくりをやってきました。チームビルドと製造現場のモノづくりはまったく同じです。ルールを守りながら、標準作業をやり、一定の品質基準を満たしながら、1秒でも短い時間で物事を作り上げなければならない。正確さを求め、みんなが同じ方向を向いて取り組まなければならないころなどからもサッカーはモノづくりそのものだと思います。
静岡はオーナー系の企業が多く、社長や会長と直接お話して営業する機会が多かったのですが、その時に、「看板を出せばテレビに映るからお願いします」といった露出を売りにすることはほとんどありませんでした。
製品が完成した時の現場の喜びを知っているなら、カターレが勝った時のサポーターの喜びも分かってくれるはずです。地域のみなさんが喜ぶために自分たちの利益の一部を提供することの意義はCSR(企業の社会的責任)というきれいな言葉を持ち出すまでもなく経営者なら理解しています。
この街に利益を還元するためにカターレを利用しませんか。企業名の露出や商品の拡販のためではなく、従業員と街の人々が喜ぶために一部の利益を、市民の心の公共財としてのカターレに投じていただけませんか。と御提案したい。これは湘南ベルマーレで仕事をしていた時から同じように伝えてきたことです。
去年はコロナ禍を理由にスポーツチームのスポンサーから撤退する企業が東海や関東では多くありました。しかし、わたしが属していた(バスケットボールの)ベルテックス静岡は新規のスポンサーが30社・4千万円も集まりました。
コロナ禍で外出ができなくなり鬱のような状態になった人は少なくありません。自殺者も増えている。心を病むと表情が失われてしまいます。スポーツはその真反対にあり、それを通じて人が喜んだり悲しんだり、たまには頭にきて怒ったり、悔しがったりできる。喜怒哀楽のある人間が多い街は活気づく。牽引するのがスポーツであり、それを専門でやっているのがプロスポーツです。それを何とかして守らなければいけない。営業として、社員と人々に喜びを提供できるかもしれないスポーツを絶やさないでくださいというお願いをしてきました。わたしたちの敵は相手チームではなく、コロナであると。コロナに勝ちたいから協力してほしい。そういった気持ちがみなさんに伝わればよいなと思っています。
Q:収益を増やしていくための方策は。
J3ならクラブの営業収益は5~8億円、J2なら15~20億円、J1だと40億円以下だとベスト5には入れないという事実があります。今季のカターレだとすべてのスポンサー枠を売ったとして約5億円だと聞いています。カテゴリーが下のクラブはチケット販売やグッズ販売など個人消費で売上を上げていくのは、アウェイサポーターも含めた来場者数を考えても難しい。単価もなかなか上げられませんし、各クラブの公式ツイッターのフォロワー数などでも明らかなようにファン・サポーターの絶対数がJ1のクラブより少ない。その分は法人営業で頑張って伸びしろの大きいクラブが昇格していく。カターレもそこは可能性があると思っています。
ただ、伸びても7~8億円で止まってしまうとJ3サイズ。上のカテゴリーで市民にもう少し上質な喜びを味わってもらうためには、法人からそれに見合った規格のスポンサー料をいただかなければいけない。その際には当然、その必要性について数字で説明させていただくことになる。エスパルスでは一昨年、業界のベスト5を獲るために営業収益50億円を目指し、スポンサー、物販、チケット、スクールを一律に値上げしてを40億円まで伸ばした。そういった点は理解していただきたいと思います。
J2に昇格しても、また落ちるエレベータークラブになっては困る。カターレの法人営業は頑張っていてスポンサー企業数は500社と多い。社数を増やしつつ、スポーツの持つ魅力で地域をもっと元気にしていくための一助としての適したスポンサー価格は見極めていかなければならないと考えています。
Q:昨年、バスケットボールのベルテックス静岡で仕事をして得たものは。
ありましたね。バスケットボールを選んだのは、先ほど話した3条件がそろったのと、筆頭株主のオーナーさんから経営者を育ててほしいとお願いされたからです。自動車を何万点もの部品からつくり上げるように、最初の立ち上げから携わってみたいと思って入りましたが、サッカー界にずっといては見つけられなかったであろう気づきが数多くありました。
特に印象的だったのが選手とファンがすごく近く、選手とスポンサーもすごく近いこと。スポンサー営業に対しても、主力選手たちが「ヒダリさん。新規のスポンサーどんどん取ってきて下さい。お礼に行く時には僕らも一緒に行きますから」と積極的に協力してくれました。新規の契約や増額を取り付けた際には1社1社、写真と先方からのメッセージ付きで公式ウエブサイトやSNSで紹介していたのですが、選手が記念撮影のために足を運んでくれました。スポンサー企業の健康増進教室へのゲスト参加に自ら手を挙げてくれたり、社員のみなさんと食堂で一緒にランチを摂ったり。選手たちが社会人としての振る舞いを分かっていて、前向きに取り組んでくれました。
試合後にもチームがファンの前で整列してキャプテンが「もう1試合あります。あしたが勝負なのでまた応援に来てください」と呼び掛けている。それに応えてファンが足を運んでくれます。それまでは選手を営業に使うのは邪道だと思っていましたが、バスケットボール界に行って考えが変わりました。興行のやり方としても、選手とファンが触れ合う機会はJリーグでももっとあってよいように思います。
Q:ウエブ上で公開している執筆記事などでチームにおけるベテラン選手の存在の大きさを強調している。清水エスパルスにおける西部洋平選手のことを指しているようだが、西部選手はカターレに移籍して今季はキャプテンを務める。
エスパルスは(社長2年目の)2016年にJ2暮らしを経験して1年でJ1に戻ったのですが、最後に9連勝して2位になり自動昇格しました。1つでも落として(3位以下になり)プレーオフにまわっていたらダメだったかもしれません。その時にチームを陰ながら支えていたのが彼でした。エスパルスはJ2らしいけんか腰というか、技術うんぬん以前に力づくで跳ね飛ばしていくような戦いができず苦しかった。西部は責任感の強い男で、自身はけがでなかなか試合に出られなかったにもかかわらずチームを支え続けてくれました。J1に復帰した翌17年も最終節まで残留を決められませんでした。最後はきれいごとではなく、(残留するために)両サイドのスペースに蹴って相手陣でなるべくプレーするという戦いをしたのですが、西部が影の監督としてチームをまとめてくれたから選手がついてきた。それまでは、ここぞという試合で必ず負けてしまう癖がありましたが、彼がそこを持ち堪えさせてくれたと思っています。青空ミーティングを行っているのを何度も見ました。今季も石﨑監督とふたりでチームを良い方向に持っていってくれると思います。
彼は昨年で引退するつもりだったようですが、川崎時代(12~15年)と変わらないフィジカルの数値を出していて、トップコンディションを維持していた。昨季は降格がなくなったこともあり若手中心の起用になって出場機会に恵まれなかったようです。わたしは彼に「あと1年でもよいから勝負しろ」と言っていた。移籍先がカターレだと聞き驚きました。自分のサッカー人生の総決算のつもりで、このチームをもとに戻すために、エスパルス時代にも増して気持ちを強くもってやってくれていると思います。
カターレ富山のクラブとしてのパフォーマンスはまだPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)、イヤーブックなどに目を通した程度なので把握できていません。昨夜、富山に来たばかりですから。J2復帰を目指すうえで、みなさんに「ここが良いんだ」と自信を持って話せる段階ではありません。
ただ、ひとつ言えるのはスタッフにくせのない人が多いという印象を持ちました。左伴というのはどちらかといえば管理屋。日産自動車時代から製造現場の管理をやってきたのもあって、「数字に置き換えて目に見える管理をしろ」とか、「メディア対応も含めて情報開示をちゃんとやりなさい」「それを誰もができるように業務を標準化しなさい」、さらに「デジタル化をちゃんとしてモダナイズしなさい」といった要求をする。(サッカー界も)競争社会なので、他のクラブの状況を知り比較するために、「スポンサー数や1社当たりの単価はどれぐらいなのか」「勝点1を得るためにいくら投資した計算になるのか勝点効率を調べてみろ」とも言う。そういった具合にやると、組織内には「そんなのやらなくても…」といったフリクション(摩擦)が結構でてくるものです。しかし、カターレには「今すぐやってみます」と言ってくれる社員が多くいるように思いました。素直な方が多いと会社の成長ピッチは上がっていく。少なくとも右肩上がりにはなりやすいと思っています。
Q:カターレは発足以来、株主企業の出身者が社長を務めてきた。スポーツビジネスのプロ経営者として招かれたかたちだ。
清水エスパルスも歴代の社長は(株主である)鈴与から派遣されていましたが、鈴与の会長である鈴木與平さんからオファーをいただき2015年に社長に就きました。サッカーは好きでもスポーツビジネスを知らずに経営してきてトップライン(営業収益)もそれほど伸びていない。スポンサー数も増えていないし、チームもそう強くない。自分たちはエスパルスを通じて地域のみなさんに喜んでもらおうと一肌脱いでお金も社長も出してきたけれど喜んでもらえていないのではないか。もっと喜んでもらうために、そのためのノウハウや手法を持っていそうな、経験のある左伴に任せようというのが與平さんの考えでした。カターレも同じだと思います。
例えば、サポーターは仲間であり、身内ですが、クラブが本当に困った時に「チケットを値上げする。それでも買ってくれ」とお願いして納得してもらえるだけの信頼関係を築かなければいけない。出向のようなかたちで短期で交代してしまうのでは、サポーターと肩は組めても、そこまで関係を深めるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
また、わたしはフリーであり、独立した立場で仕事をしているので、必要があれば口幅ったいこともストレートに言います。例えばスポンサー営業の際も「ある企業からは『地域のみなさんが喜んでくれたらそれでよい』という考えで協賛をいただいている。素晴らしいと思いませんか。御社はどうですか」と啖呵を切ることがあります。だから時には嫌われる。「外様のくせに」と言われたことも何度もあります。しかし、それでクラブが大きくなり、優勝や昇格を果たすこともできました。よそものだからこそ、客観的に「ここはもっと頑張らなければいけない」ときちんと言えます。そういったことを実は分かっていて言いたかったのはクラブのスタッフや選手、サポーターであるケースが少なくありません。ですから最終的にはクラブのスタッフや選手、サポーターがわたしを守ってくれました。以上のような点はこれまでとは違うかもしれません。
Q:地域とクラブの潜在能力を高く評価している。
カターレの現在の株主構成や富山のみなさんのスポーツに対する造詣の深さ、地元愛、街としての財力などを考えると、ポテンシャルはJ1クラスだと思います。バスケットはグラウジーズがB1で頑張っていますね。株主企業のトップライン(売上高/営業収益)の合計ならJ1でも上位クラスです。それぐらいまで上がっていける青写真はつくれるんじゃないかと思っています。「なんでJ3にいるんだろう」と感じるぐらいです。
Q:BtoB(企業間取引)を主とする製造業が多いのが富山の土地柄。日産自動車でモノづくりに携わった経験から、そういった企業にスポーツに目を向けてもらうためにはどうすればよいと考えるか。スポーツとモノづくりには共通点もあるように思うのだが。
スポンサー営業に王道はありません。僕もモノづくりをやってきました。チームビルドと製造現場のモノづくりはまったく同じです。ルールを守りながら、標準作業をやり、一定の品質基準を満たしながら、1秒でも短い時間で物事を作り上げなければならない。正確さを求め、みんなが同じ方向を向いて取り組まなければならないころなどからもサッカーはモノづくりそのものだと思います。
静岡はオーナー系の企業が多く、社長や会長と直接お話して営業する機会が多かったのですが、その時に、「看板を出せばテレビに映るからお願いします」といった露出を売りにすることはほとんどありませんでした。
製品が完成した時の現場の喜びを知っているなら、カターレが勝った時のサポーターの喜びも分かってくれるはずです。地域のみなさんが喜ぶために自分たちの利益の一部を提供することの意義はCSR(企業の社会的責任)というきれいな言葉を持ち出すまでもなく経営者なら理解しています。
この街に利益を還元するためにカターレを利用しませんか。企業名の露出や商品の拡販のためではなく、従業員と街の人々が喜ぶために一部の利益を、市民の心の公共財としてのカターレに投じていただけませんか。と御提案したい。これは湘南ベルマーレで仕事をしていた時から同じように伝えてきたことです。
去年はコロナ禍を理由にスポーツチームのスポンサーから撤退する企業が東海や関東では多くありました。しかし、わたしが属していた(バスケットボールの)ベルテックス静岡は新規のスポンサーが30社・4千万円も集まりました。
コロナ禍で外出ができなくなり鬱のような状態になった人は少なくありません。自殺者も増えている。心を病むと表情が失われてしまいます。スポーツはその真反対にあり、それを通じて人が喜んだり悲しんだり、たまには頭にきて怒ったり、悔しがったりできる。喜怒哀楽のある人間が多い街は活気づく。牽引するのがスポーツであり、それを専門でやっているのがプロスポーツです。それを何とかして守らなければいけない。営業として、社員と人々に喜びを提供できるかもしれないスポーツを絶やさないでくださいというお願いをしてきました。わたしたちの敵は相手チームではなく、コロナであると。コロナに勝ちたいから協力してほしい。そういった気持ちがみなさんに伝わればよいなと思っています。
Q:収益を増やしていくための方策は。
J3ならクラブの営業収益は5~8億円、J2なら15~20億円、J1だと40億円以下だとベスト5には入れないという事実があります。今季のカターレだとすべてのスポンサー枠を売ったとして約5億円だと聞いています。カテゴリーが下のクラブはチケット販売やグッズ販売など個人消費で売上を上げていくのは、アウェイサポーターも含めた来場者数を考えても難しい。単価もなかなか上げられませんし、各クラブの公式ツイッターのフォロワー数などでも明らかなようにファン・サポーターの絶対数がJ1のクラブより少ない。その分は法人営業で頑張って伸びしろの大きいクラブが昇格していく。カターレもそこは可能性があると思っています。
ただ、伸びても7~8億円で止まってしまうとJ3サイズ。上のカテゴリーで市民にもう少し上質な喜びを味わってもらうためには、法人からそれに見合った規格のスポンサー料をいただかなければいけない。その際には当然、その必要性について数字で説明させていただくことになる。エスパルスでは一昨年、業界のベスト5を獲るために営業収益50億円を目指し、スポンサー、物販、チケット、スクールを一律に値上げしてを40億円まで伸ばした。そういった点は理解していただきたいと思います。
J2に昇格しても、また落ちるエレベータークラブになっては困る。カターレの法人営業は頑張っていてスポンサー企業数は500社と多い。社数を増やしつつ、スポーツの持つ魅力で地域をもっと元気にしていくための一助としての適したスポンサー価格は見極めていかなければならないと考えています。
Q:昨年、バスケットボールのベルテックス静岡で仕事をして得たものは。
ありましたね。バスケットボールを選んだのは、先ほど話した3条件がそろったのと、筆頭株主のオーナーさんから経営者を育ててほしいとお願いされたからです。自動車を何万点もの部品からつくり上げるように、最初の立ち上げから携わってみたいと思って入りましたが、サッカー界にずっといては見つけられなかったであろう気づきが数多くありました。
特に印象的だったのが選手とファンがすごく近く、選手とスポンサーもすごく近いこと。スポンサー営業に対しても、主力選手たちが「ヒダリさん。新規のスポンサーどんどん取ってきて下さい。お礼に行く時には僕らも一緒に行きますから」と積極的に協力してくれました。新規の契約や増額を取り付けた際には1社1社、写真と先方からのメッセージ付きで公式ウエブサイトやSNSで紹介していたのですが、選手が記念撮影のために足を運んでくれました。スポンサー企業の健康増進教室へのゲスト参加に自ら手を挙げてくれたり、社員のみなさんと食堂で一緒にランチを摂ったり。選手たちが社会人としての振る舞いを分かっていて、前向きに取り組んでくれました。
試合後にもチームがファンの前で整列してキャプテンが「もう1試合あります。あしたが勝負なのでまた応援に来てください」と呼び掛けている。それに応えてファンが足を運んでくれます。それまでは選手を営業に使うのは邪道だと思っていましたが、バスケットボール界に行って考えが変わりました。興行のやり方としても、選手とファンが触れ合う機会はJリーグでももっとあってよいように思います。
Q:ウエブ上で公開している執筆記事などでチームにおけるベテラン選手の存在の大きさを強調している。清水エスパルスにおける西部洋平選手のことを指しているようだが、西部選手はカターレに移籍して今季はキャプテンを務める。
エスパルスは(社長2年目の)2016年にJ2暮らしを経験して1年でJ1に戻ったのですが、最後に9連勝して2位になり自動昇格しました。1つでも落として(3位以下になり)プレーオフにまわっていたらダメだったかもしれません。その時にチームを陰ながら支えていたのが彼でした。エスパルスはJ2らしいけんか腰というか、技術うんぬん以前に力づくで跳ね飛ばしていくような戦いができず苦しかった。西部は責任感の強い男で、自身はけがでなかなか試合に出られなかったにもかかわらずチームを支え続けてくれました。J1に復帰した翌17年も最終節まで残留を決められませんでした。最後はきれいごとではなく、(残留するために)両サイドのスペースに蹴って相手陣でなるべくプレーするという戦いをしたのですが、西部が影の監督としてチームをまとめてくれたから選手がついてきた。それまでは、ここぞという試合で必ず負けてしまう癖がありましたが、彼がそこを持ち堪えさせてくれたと思っています。青空ミーティングを行っているのを何度も見ました。今季も石﨑監督とふたりでチームを良い方向に持っていってくれると思います。
彼は昨年で引退するつもりだったようですが、川崎時代(12~15年)と変わらないフィジカルの数値を出していて、トップコンディションを維持していた。昨季は降格がなくなったこともあり若手中心の起用になって出場機会に恵まれなかったようです。わたしは彼に「あと1年でもよいから勝負しろ」と言っていた。移籍先がカターレだと聞き驚きました。自分のサッカー人生の総決算のつもりで、このチームをもとに戻すために、エスパルス時代にも増して気持ちを強くもってやってくれていると思います。
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