■左伴繁雄・次期社長 記者会見詳報
- 2021/03/03
- 18:01
カターレ富山は3月3日、次期社長内定者で顧問に就任した左伴繁雄氏の記者会見を行った。左伴顧問は冒頭、就任までの経緯や今後取り組むべき課題、クラブと地域の持つ可能性などについて約30分にわたり語った。
サッカーを通じて人々に「富山に住んでいてよかった」と感じてもらえるクラブづくりを目標に掲げ、そのための最優先課題として「J2復帰」を挙げた。質疑応答を含み約1時間の会見の模様を詳報する。
※クラブの公式 YouTubeチャンネルで会見の模様をすべて視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=Cy85YgdfdMQ
※左伴氏のプロフィルは以下のクラブ公式サイトを参照ください。
https://www.kataller.co.jp/all/press-release/daihyo-ch
★質疑応答はのちほど追記します。
<次期社長就任内定までの経緯>
1月29日の取締役会でカターレへの移籍が承認され、3月1日より顧問に就任しました。4月の取締役会、株主総会でその資格があると認められましたら次期の社長に就任する予定になっています。
もともと富山とは縁がなく、日産自動車に勤務していた際に一度来たことがあるだけで土地勘もありません。これから勉強させていただく身です。みなさんのサポートもいただきながら務めて参りたいと思っています。
にもかかわらずこちらに御厄介になることになったのは、現社長の山田さんが「自らのポストを左伴へ」と会長の久和さんに御提案いただいたから。当事者が自らのポストを他の者に譲るというのはなかなかできることではありません。わたしも過去に同じような経験があり後任選びもしたことがありますが複雑な思いがあったのを覚えています。それを外連味もなく行われたことにまずもって感謝したいと思います。その分、肩にかかってくる重さも感じながら仕事をしなければいけません。
また、その提案を受け入れた会長である久和さんの懐の深さにも敬意を表したい。わたしも横浜マリノスの社長になった時は株主である日産からの出向というかたちだった。大株主が適性のある社員を送り込むというのが多くのJリーグクラブの人事。今回、これまでの経験があるとはいえ、富山にまったく縁もゆかりもない左伴を迎え入れようという懐の深さがなければ今回わたしはここに座っていなかったと思います。
もう一人、スタッフの齋藤君がしつこく静岡に足を運んでまでも、わたしのスポーツビジネスやJリーグに関する見識や経験を聞いて高く評価してくれ、さまざまなとりなしをしてくれました。以上の3人の思いがあって、ここに座らせていただいていると今しみじみ思います。プロスポーツの経営者を外部から呼ぶことは簡単なようで難しい。3人の判断と行動があったからこそ成し得たものだと考えています。
<就任依頼を引き受けた理由>
ひるがえってわたしのほうですが、移籍については自分なりの考えを持っています。来るものは拒まずなのですが、(先方の)情熱や誠意、適切な権限と具体的な役割や責任を与えられること、そして最も重視するのが、どのような大義があるかということ。その3つがそろえばどんな場所にも、海外であっても請われるなら移籍すべしと思っており、富山についてはその3つがそろいました。3人の方の思いは十分に伝わってきて、三顧の礼で迎えていただいた。代表取締役社長という、執行責任上の最高権限を与えていただけるという内諾もいただいた。
スポーツビジネスをやっていくうえで最も大事なのは昇格することでも優勝することでもありません。それは単なる方策であって、それを通して、またそれ以外のアカデミーを通じて子供たちが喜んでサッカーをする姿や、地域のみなさんと一緒に催事をやっていく中で、多くの人が「カターレがここにあってよかったな」「富山に住んでいてよかったな」「ここで生まれてよかった」「仲間とサッカーを通じて喜怒哀楽をともにできてよかったな」と思うことが最終的な目的。富山はもっともっと、市民のみなさんやクラブを支えていただいているサポーター、スポンサー、株主、応援していただいているみなさんがもっとカターレとふれ合うことで、そのような思いをもっていだだける可能性を持った街だと思っています。そのポテンシャルをなんとか花開かせるために、自身の20年の経験やノウハウ、管理手法などを使って、みんなに「よかったな」と思われるクラブにしていくのが、わたしの大義だと考えています。
過去に4つのスポーツクラブに属してきました。優勝だけを求められるクラブの経営も経験しましたし、資金のないクラブを存続させるためだけを考えて取り組んだ経験もある。ただ、可能性のあるクラブをみんなで額に汗しながら、応援してくれる方々に「応援していてよかった」「住んでいてよかった」と思ってもらえるクラブに持っていくまでの、長い道のりを歩んだ経験はこれまでありません。積み木をイチから組み立てるような、そんなつもりでやれるなら、わたしにとって初めての挑戦になります。「次のカターレが総決算になりますね」とメディアの方からよく言われますが、わたしにとっては新たなチャレンジだと思っています。
今はカテゴリーがJ3で、アカデミーに在籍するお子さんも1000人未満ですが、それをみんなに愛されるクラブまでもっていける道のりをイチから歩んでいける喜びを、社員と現場のスタッフと共にしていきたいと思っています。
<取り組むべき課題について>
喫緊の課題としてはJ2に戻ることだと考えています。なによりも増して経営のフォーカスをそこにあてていくようなマネジメントやメッセージをどんどん打っていかなければいけない年だと思っています。
ある意味でファーストチャンスでありラストチャンス。御存知の通り今季のJ3は、昨季の上位2つがJ2に抜け、J2からの降格クラブがありません。客観的にみてJ2に戻る大きなチャンスが訪れていると言えます。まして来季になるとJ2から4つのクラブがJ3に降格してきます。そこに財力に勝るクラブが含まれていて翌年の昇格枠を1つ占められてしまう恐れもある。「今年でなんとかしてJ2に戻る」ということを課題として前面に押し出していきたい。メディアのみなさんの協力も必要になります。メッセージをどんどん吸い上げてもらい、活字、映像で伝えていだたき、カターレの本気を、ご支援いただいている方に届けていただけたらと思います。
わたしの考えるJ2復帰のシナリオですが、以前に記してもいますが、3つの大きなファクターがあります。ほかのクラブを凌駕するような財力は大事。2つ目はファイティングスピリッツ。3つ目はリバウンドメンタリティー。この3つは最低限、トップチームだけでなく、フロントとアカデミーのスタッフも含めてこのクラブのみんなが持っていなければJ2に戻ることはできないと思っています。
財力についてはわたしの範疇として考えていかなければいけません。売上は降格してから減少気味から横ばい、コロナ禍では健闘している。ただ、J3で昇格を目指しているクラブの中にはカターレの上をいく財力を持っているクラブも少なくありません。
Jリーグも30年を経て資金力がトップチームの成績とリンクするようになっています。お金を多くかけたチームがそれに応じて上位に入る傾向は強まっている。多くの金額を選手や監督の年俸、その他のインフラに費やしているからです。成熟したスポーツ産業になってきている証拠であるとも言えます。状況はJ3でも同じ。まず財力をつけなければいけません。すでに策定済みの予算を上回るような収益をどうやってあげていくかフロントで考えていきます。山田さんが財務状況を良くしてくれたので、勝負に出る時には(戦力補強など強化に投資して)赤字も覚悟して臨まなければならないと考えています。稼ぐこと、切り詰めることは大前提。それでも足りなければ赤字になることも覚悟してやるべき年だと思う。来年のことを考えると、今年勝負をかけなければいけません。
(2014年に)降格を味わった選手はもう在籍していないと聞きました。「復帰」という言葉を使っても現場はピンとこないかもしれない。「復帰」という言葉に最も反応してくれているのが久和会長ですし、その悔しさを経験しているフロントのスタッフです。こういう人たち、悔しい思いをした人たちはクラブがもとに戻ることに対して全精力を注いでくれます。しかし、滞留が長くなり経験のない人が多くなると、「なぜこれだけ投資をしていて昇格できないんだ」という感覚に陥ってしまう。カターレはそこに片足を突っ込んでいる。それを客観的に捉えながらわたしはオペレーションをしていく。復帰をする、昇格をするといった経験がない選手ばかりなら、そういう選手を獲得しなければいけない。西部君なんかがそう。経験を伝えて現場をピリッとさせてくれる。そういった面も含めて(強化のために必要な)財力は付けていかなければいけません。
ファイティングスピリッツとリバウンドメンタリティーについては言うのは簡単。「90分走り切れ」「気迫で負けるな」「1対1や球際で負けるな」とか。サッカーだけでなくスポーツの原点であるのですが、闘争本能をスポーツに転嫁しなければいけない。これをちゃんとできるクラブは、たとえ負けたとしても誰からも責められない。そういった、試合ですべてを出し切るようなファイティングスピリッツを日ごろから培わなければいけない。J2に復帰するための一丁目一番地だと思います。
二番地がリバウンドメンタリティー。最後の5試合、7試合ぐらいのチームは、単なる調子が良い時のチームとは異なるのもです。体は動くし、監督の指示通りにサッカーはできても、球際で負けたり、失点してしまったりする。するとハーフタイムで監督以外に声が出ないとか。そういう後ろ向きな気持ちがでてくると昇格や復帰はできない。ここを支えるのは、普段から試合に向けてやり尽くしている、やり切っている人間。苦しくても逆転ができる冷静な気持ちを培う要素でもある。監督はそれを分かっていて起用法を変えてくる。できれば今季のカターレは最後の5試合になってもそれまでと変わらないメンバーで戦えるぐらいのメンタリティーを日ごろの練習から培ってほしい。
先日に磐田で石﨑監督と話しましたが、この3つのうちのお金のことは心配しなくてよい、あと2つの養成はお前の真骨頂なのだからしっかりやってほしいと伝えています。強化担当と考えを共有しながらチーム編成や選手補強の微調整はやっていきたい。少し前のめりに、現場からの要望は出させながら、わたしどもの力で持てる範囲の戦力をきちんと整備して「なんとかしてJ2に戻る」という喫緊の課題をクリアしたい。
<富山とカターレの可能性>
最後になりますが、わたしは1990年代の日産自動車時代から、富山という街には、おおげさな言い方をすれば、憧れを持っていました。企業人としての憧れです。通常、大手企業が本社を構えるのは太平洋側の東京、大阪、名古屋だが、富山には北陸電力、インテック、日医工、YKKをはじめとする大きな会社が居を構えている。そういう企業が集まっていながらも深掘りできる伝統文化、歴史をもっている。人口規模も、わたしたちの一挙手一投足で笑ったり泣いたりする人の顔が分かるサイズだ。1千万人、5百万人の街でサッカー事業をやっていても人々の喜ぶ顔の造作が分からない。こういう稼業は、人の喜怒哀楽をじかに感じる喜びがなによりも励みになる。優良な法人、適度なサイズ感、伝統的な文化、さらに行政も先進的な事業に取り組んでいる。
その街をスポーツという領域で活性化し、みんなと泣いたり笑ったりしながらクラブの成長を促していく仕事ができる。わたくしごとながら大変光栄なことですし、この競技場でシーズン末には歓喜でむせび泣くシーンに思いをはせながら執行していきたいと思っています。長くなりましたが、わたしの所信についてお話させていただきました。

サッカーを通じて人々に「富山に住んでいてよかった」と感じてもらえるクラブづくりを目標に掲げ、そのための最優先課題として「J2復帰」を挙げた。質疑応答を含み約1時間の会見の模様を詳報する。
※クラブの公式 YouTubeチャンネルで会見の模様をすべて視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=Cy85YgdfdMQ
※左伴氏のプロフィルは以下のクラブ公式サイトを参照ください。
https://www.kataller.co.jp/all/press-release/daihyo-ch
★質疑応答はのちほど追記します。
<次期社長就任内定までの経緯>
1月29日の取締役会でカターレへの移籍が承認され、3月1日より顧問に就任しました。4月の取締役会、株主総会でその資格があると認められましたら次期の社長に就任する予定になっています。
もともと富山とは縁がなく、日産自動車に勤務していた際に一度来たことがあるだけで土地勘もありません。これから勉強させていただく身です。みなさんのサポートもいただきながら務めて参りたいと思っています。
にもかかわらずこちらに御厄介になることになったのは、現社長の山田さんが「自らのポストを左伴へ」と会長の久和さんに御提案いただいたから。当事者が自らのポストを他の者に譲るというのはなかなかできることではありません。わたしも過去に同じような経験があり後任選びもしたことがありますが複雑な思いがあったのを覚えています。それを外連味もなく行われたことにまずもって感謝したいと思います。その分、肩にかかってくる重さも感じながら仕事をしなければいけません。
また、その提案を受け入れた会長である久和さんの懐の深さにも敬意を表したい。わたしも横浜マリノスの社長になった時は株主である日産からの出向というかたちだった。大株主が適性のある社員を送り込むというのが多くのJリーグクラブの人事。今回、これまでの経験があるとはいえ、富山にまったく縁もゆかりもない左伴を迎え入れようという懐の深さがなければ今回わたしはここに座っていなかったと思います。
もう一人、スタッフの齋藤君がしつこく静岡に足を運んでまでも、わたしのスポーツビジネスやJリーグに関する見識や経験を聞いて高く評価してくれ、さまざまなとりなしをしてくれました。以上の3人の思いがあって、ここに座らせていただいていると今しみじみ思います。プロスポーツの経営者を外部から呼ぶことは簡単なようで難しい。3人の判断と行動があったからこそ成し得たものだと考えています。
<就任依頼を引き受けた理由>
ひるがえってわたしのほうですが、移籍については自分なりの考えを持っています。来るものは拒まずなのですが、(先方の)情熱や誠意、適切な権限と具体的な役割や責任を与えられること、そして最も重視するのが、どのような大義があるかということ。その3つがそろえばどんな場所にも、海外であっても請われるなら移籍すべしと思っており、富山についてはその3つがそろいました。3人の方の思いは十分に伝わってきて、三顧の礼で迎えていただいた。代表取締役社長という、執行責任上の最高権限を与えていただけるという内諾もいただいた。
スポーツビジネスをやっていくうえで最も大事なのは昇格することでも優勝することでもありません。それは単なる方策であって、それを通して、またそれ以外のアカデミーを通じて子供たちが喜んでサッカーをする姿や、地域のみなさんと一緒に催事をやっていく中で、多くの人が「カターレがここにあってよかったな」「富山に住んでいてよかったな」「ここで生まれてよかった」「仲間とサッカーを通じて喜怒哀楽をともにできてよかったな」と思うことが最終的な目的。富山はもっともっと、市民のみなさんやクラブを支えていただいているサポーター、スポンサー、株主、応援していただいているみなさんがもっとカターレとふれ合うことで、そのような思いをもっていだだける可能性を持った街だと思っています。そのポテンシャルをなんとか花開かせるために、自身の20年の経験やノウハウ、管理手法などを使って、みんなに「よかったな」と思われるクラブにしていくのが、わたしの大義だと考えています。
過去に4つのスポーツクラブに属してきました。優勝だけを求められるクラブの経営も経験しましたし、資金のないクラブを存続させるためだけを考えて取り組んだ経験もある。ただ、可能性のあるクラブをみんなで額に汗しながら、応援してくれる方々に「応援していてよかった」「住んでいてよかった」と思ってもらえるクラブに持っていくまでの、長い道のりを歩んだ経験はこれまでありません。積み木をイチから組み立てるような、そんなつもりでやれるなら、わたしにとって初めての挑戦になります。「次のカターレが総決算になりますね」とメディアの方からよく言われますが、わたしにとっては新たなチャレンジだと思っています。
今はカテゴリーがJ3で、アカデミーに在籍するお子さんも1000人未満ですが、それをみんなに愛されるクラブまでもっていける道のりをイチから歩んでいける喜びを、社員と現場のスタッフと共にしていきたいと思っています。
<取り組むべき課題について>
喫緊の課題としてはJ2に戻ることだと考えています。なによりも増して経営のフォーカスをそこにあてていくようなマネジメントやメッセージをどんどん打っていかなければいけない年だと思っています。
ある意味でファーストチャンスでありラストチャンス。御存知の通り今季のJ3は、昨季の上位2つがJ2に抜け、J2からの降格クラブがありません。客観的にみてJ2に戻る大きなチャンスが訪れていると言えます。まして来季になるとJ2から4つのクラブがJ3に降格してきます。そこに財力に勝るクラブが含まれていて翌年の昇格枠を1つ占められてしまう恐れもある。「今年でなんとかしてJ2に戻る」ということを課題として前面に押し出していきたい。メディアのみなさんの協力も必要になります。メッセージをどんどん吸い上げてもらい、活字、映像で伝えていだたき、カターレの本気を、ご支援いただいている方に届けていただけたらと思います。
わたしの考えるJ2復帰のシナリオですが、以前に記してもいますが、3つの大きなファクターがあります。ほかのクラブを凌駕するような財力は大事。2つ目はファイティングスピリッツ。3つ目はリバウンドメンタリティー。この3つは最低限、トップチームだけでなく、フロントとアカデミーのスタッフも含めてこのクラブのみんなが持っていなければJ2に戻ることはできないと思っています。
財力についてはわたしの範疇として考えていかなければいけません。売上は降格してから減少気味から横ばい、コロナ禍では健闘している。ただ、J3で昇格を目指しているクラブの中にはカターレの上をいく財力を持っているクラブも少なくありません。
Jリーグも30年を経て資金力がトップチームの成績とリンクするようになっています。お金を多くかけたチームがそれに応じて上位に入る傾向は強まっている。多くの金額を選手や監督の年俸、その他のインフラに費やしているからです。成熟したスポーツ産業になってきている証拠であるとも言えます。状況はJ3でも同じ。まず財力をつけなければいけません。すでに策定済みの予算を上回るような収益をどうやってあげていくかフロントで考えていきます。山田さんが財務状況を良くしてくれたので、勝負に出る時には(戦力補強など強化に投資して)赤字も覚悟して臨まなければならないと考えています。稼ぐこと、切り詰めることは大前提。それでも足りなければ赤字になることも覚悟してやるべき年だと思う。来年のことを考えると、今年勝負をかけなければいけません。
(2014年に)降格を味わった選手はもう在籍していないと聞きました。「復帰」という言葉を使っても現場はピンとこないかもしれない。「復帰」という言葉に最も反応してくれているのが久和会長ですし、その悔しさを経験しているフロントのスタッフです。こういう人たち、悔しい思いをした人たちはクラブがもとに戻ることに対して全精力を注いでくれます。しかし、滞留が長くなり経験のない人が多くなると、「なぜこれだけ投資をしていて昇格できないんだ」という感覚に陥ってしまう。カターレはそこに片足を突っ込んでいる。それを客観的に捉えながらわたしはオペレーションをしていく。復帰をする、昇格をするといった経験がない選手ばかりなら、そういう選手を獲得しなければいけない。西部君なんかがそう。経験を伝えて現場をピリッとさせてくれる。そういった面も含めて(強化のために必要な)財力は付けていかなければいけません。
ファイティングスピリッツとリバウンドメンタリティーについては言うのは簡単。「90分走り切れ」「気迫で負けるな」「1対1や球際で負けるな」とか。サッカーだけでなくスポーツの原点であるのですが、闘争本能をスポーツに転嫁しなければいけない。これをちゃんとできるクラブは、たとえ負けたとしても誰からも責められない。そういった、試合ですべてを出し切るようなファイティングスピリッツを日ごろから培わなければいけない。J2に復帰するための一丁目一番地だと思います。
二番地がリバウンドメンタリティー。最後の5試合、7試合ぐらいのチームは、単なる調子が良い時のチームとは異なるのもです。体は動くし、監督の指示通りにサッカーはできても、球際で負けたり、失点してしまったりする。するとハーフタイムで監督以外に声が出ないとか。そういう後ろ向きな気持ちがでてくると昇格や復帰はできない。ここを支えるのは、普段から試合に向けてやり尽くしている、やり切っている人間。苦しくても逆転ができる冷静な気持ちを培う要素でもある。監督はそれを分かっていて起用法を変えてくる。できれば今季のカターレは最後の5試合になってもそれまでと変わらないメンバーで戦えるぐらいのメンタリティーを日ごろの練習から培ってほしい。
先日に磐田で石﨑監督と話しましたが、この3つのうちのお金のことは心配しなくてよい、あと2つの養成はお前の真骨頂なのだからしっかりやってほしいと伝えています。強化担当と考えを共有しながらチーム編成や選手補強の微調整はやっていきたい。少し前のめりに、現場からの要望は出させながら、わたしどもの力で持てる範囲の戦力をきちんと整備して「なんとかしてJ2に戻る」という喫緊の課題をクリアしたい。
<富山とカターレの可能性>
最後になりますが、わたしは1990年代の日産自動車時代から、富山という街には、おおげさな言い方をすれば、憧れを持っていました。企業人としての憧れです。通常、大手企業が本社を構えるのは太平洋側の東京、大阪、名古屋だが、富山には北陸電力、インテック、日医工、YKKをはじめとする大きな会社が居を構えている。そういう企業が集まっていながらも深掘りできる伝統文化、歴史をもっている。人口規模も、わたしたちの一挙手一投足で笑ったり泣いたりする人の顔が分かるサイズだ。1千万人、5百万人の街でサッカー事業をやっていても人々の喜ぶ顔の造作が分からない。こういう稼業は、人の喜怒哀楽をじかに感じる喜びがなによりも励みになる。優良な法人、適度なサイズ感、伝統的な文化、さらに行政も先進的な事業に取り組んでいる。
その街をスポーツという領域で活性化し、みんなと泣いたり笑ったりしながらクラブの成長を促していく仕事ができる。わたくしごとながら大変光栄なことですし、この競技場でシーズン末には歓喜でむせび泣くシーンに思いをはせながら執行していきたいと思っています。長くなりましたが、わたしの所信についてお話させていただきました。

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