シーズン総括2020(下)■象徴的だった「2●3」
- 2021/01/06
- 12:00
安達監督が思い描いていたサッカーを表現するうえで、MF佐々木陽次が第4節・秋田戦を最後にケガで長期離脱したのは痛かった。パス&ムーブで前線の潤滑油的な役割を担う彼の欠場によって攻撃パターンに広がりを欠いた。さらにはこれによってボール保持と攻撃の組み立ての両面でMF花井聖への依存度が昨季よりも高まってしまい、負担も大きくなった。対戦相手は守りの狙いが絞りやすかっただろう。
花井は攻撃をてこ入れするために第7―16節はトップ下で先発したが、チームが不振に陥った第17節・岐阜戦以降はボール保持を安定させるためにボランチに戻った。昨季はボールをキープできるDF前嶋が彼を助けていたが、それに代わるピッチ内での調和を構築することがなかなかできなかった。
ファンクラブ会報のインタビューでMF宮城天とMF末木裕也はそろって第9節・相模原戦(3○0/8月10日)を今季のベストゲームに挙げている。宮城は「ちょうどそのころは[4-4-2]で目指していたパスサッカーが体現でき始めていて、結果もついてきそうな感触があった。(次の第10節・鹿児島戦で自身が肩を脱臼して)ケガで抜けてしまい、水を差したようなかたちになってしまったのが悔しい。あの時期が理想に最も近かったのではないかと思う」と振り返っている。
FW武颯が10得点を挙げて2013年の苔口卓也以来となる2桁ゴールをマークするなどFW陣は当初の期待通りに決定力を発揮した。総得点52はリーグ4位で、1試合平均でクラブ過去最高だった昨季の54と遜色ない。
一方で失点が昨季はリーグ2位タイの31だったが、同8位タイの43に増えた。昨季はボールを握って攻撃する時間が長く、守備機会自体が少なかった。今季はボール保持に安定感を欠き、攻撃途中でボールを失ってカウンターやロングボールで裏を狙われて失点するケースが目立った。昨季はGK榎本が統率力を発揮して最終ラインに安心感を与えていたことを考えても、守備の総合力がやや低下していたのは否めない。4バックに見切りをつけ、守備時は5バックになる[3-4-2-1]にしてからは第23-26節にクラブ記録タイとなる4試合連続無失点をマークした。
上記の数字の通りに「得点を取れるが失点も多い」というのがシーズン通しての傾向だった。思えば、前半0-3から後半だけで4ゴールを挙げて逆転勝ちした第2節・YS横浜戦はその後の戦いを暗示していた。第11節・今治戦までに挙げた5勝はすべて3点以上を奪ってのものだった。
昨季は2点以上挙げると15戦全勝だったが、今季は11勝1分5敗。5敗はすべて2-3で、2-2から終了間際に決勝点を許して競り負けた。その5試合は第13節・熊本戦、第18節・相模原戦、第21節・G大阪U-23戦、第27節・福島戦、最終34節・沼津戦。振り返ってみると、その後の展開を左右したかもしれない節目のゲームばかりだ。安達監督の退任が決まり、最終節がこのスコアで終わったのは象徴的だった。
開幕が約4カ月遅れて短期集中の開催となったが、起伏があり感情を揺さぶられた中味の濃いシーズンだった。無敗で優勝した秋田に初黒星を付けて負けなしのJリーグ記録をストップさせた第29節や、後半アディショナルタイムに武が2ゴールを挙げて逆転勝ちを収め昇格へ望みをつないだ第30節・C大阪U-23戦はサポーターに長く語り継がれるだろう。
新型コロナウイルスの影響は来季まで及びそうで、クラブ運営は難しい舵取りをしいられる。スタジアムから足が遠のいた人々を再び呼び込めるか、声援を送ることや練習の見学ができない中でチームとのファン・サポーターの距離感を縮められるか、といった課題とも向き合わなければならない。2021年のJ3は3月13日に開幕予定だ。
花井は攻撃をてこ入れするために第7―16節はトップ下で先発したが、チームが不振に陥った第17節・岐阜戦以降はボール保持を安定させるためにボランチに戻った。昨季はボールをキープできるDF前嶋が彼を助けていたが、それに代わるピッチ内での調和を構築することがなかなかできなかった。
ファンクラブ会報のインタビューでMF宮城天とMF末木裕也はそろって第9節・相模原戦(3○0/8月10日)を今季のベストゲームに挙げている。宮城は「ちょうどそのころは[4-4-2]で目指していたパスサッカーが体現でき始めていて、結果もついてきそうな感触があった。(次の第10節・鹿児島戦で自身が肩を脱臼して)ケガで抜けてしまい、水を差したようなかたちになってしまったのが悔しい。あの時期が理想に最も近かったのではないかと思う」と振り返っている。
FW武颯が10得点を挙げて2013年の苔口卓也以来となる2桁ゴールをマークするなどFW陣は当初の期待通りに決定力を発揮した。総得点52はリーグ4位で、1試合平均でクラブ過去最高だった昨季の54と遜色ない。
一方で失点が昨季はリーグ2位タイの31だったが、同8位タイの43に増えた。昨季はボールを握って攻撃する時間が長く、守備機会自体が少なかった。今季はボール保持に安定感を欠き、攻撃途中でボールを失ってカウンターやロングボールで裏を狙われて失点するケースが目立った。昨季はGK榎本が統率力を発揮して最終ラインに安心感を与えていたことを考えても、守備の総合力がやや低下していたのは否めない。4バックに見切りをつけ、守備時は5バックになる[3-4-2-1]にしてからは第23-26節にクラブ記録タイとなる4試合連続無失点をマークした。
上記の数字の通りに「得点を取れるが失点も多い」というのがシーズン通しての傾向だった。思えば、前半0-3から後半だけで4ゴールを挙げて逆転勝ちした第2節・YS横浜戦はその後の戦いを暗示していた。第11節・今治戦までに挙げた5勝はすべて3点以上を奪ってのものだった。
昨季は2点以上挙げると15戦全勝だったが、今季は11勝1分5敗。5敗はすべて2-3で、2-2から終了間際に決勝点を許して競り負けた。その5試合は第13節・熊本戦、第18節・相模原戦、第21節・G大阪U-23戦、第27節・福島戦、最終34節・沼津戦。振り返ってみると、その後の展開を左右したかもしれない節目のゲームばかりだ。安達監督の退任が決まり、最終節がこのスコアで終わったのは象徴的だった。
開幕が約4カ月遅れて短期集中の開催となったが、起伏があり感情を揺さぶられた中味の濃いシーズンだった。無敗で優勝した秋田に初黒星を付けて負けなしのJリーグ記録をストップさせた第29節や、後半アディショナルタイムに武が2ゴールを挙げて逆転勝ちを収め昇格へ望みをつないだ第30節・C大阪U-23戦はサポーターに長く語り継がれるだろう。
新型コロナウイルスの影響は来季まで及びそうで、クラブ運営は難しい舵取りをしいられる。スタジアムから足が遠のいた人々を再び呼び込めるか、声援を送ることや練習の見学ができない中でチームとのファン・サポーターの距離感を縮められるか、といった課題とも向き合わなければならない。2021年のJ3は3月13日に開幕予定だ。
- 関連記事
-
- 【高知キャンプレポート】攻撃的な守り構築へ着々
- ■石﨑信弘監督 就任会見の詳報
- シーズン総括2020(下)■象徴的だった「2●3」
- シーズン総括2020(中)■昨季の成功体験が仇に
- シーズン総括2020(上)■コロナがなければ…