シーズン総括2020(中)■昨季の成功体験が仇に
- 2021/01/05
- 12:00
なぜ、安達監督はJ3の他チームと一線を画すターンオーバーにトライしたのか。過密日程だけではない、もう1つの理由がある。
新型コロナウイルスの影響が日程やルール変更をはじめさまざまな形で表れた中で、安達監督は「わたしが最も重く受け止めたのは来季のJ2は下位4クラブが降格対象になるということだった」とシーズン後に明かした。「(昇格したうえで)絶対にすぐ降格しないように、今季在籍している選手全員をJ2で戦えるように育て、そのうえでチームとしてのかたちを成熟させなければならない」との思いをより強くしたという。試合までのトレーニングの量と質をなるべく落とさず、多くの選手に出場機会も与えられるという点にも期待してターンオーバー制の採用に踏み切った。「『昇格してもいないくせに』と言われてもしょうがない。今になって思えば壮大な夢だった。現実をみればよかったのだろうが、チームづくりの入りはそこだった」と自嘲気味に語った。
安達監督が「攻撃的なサッカーで圧倒的に勝つ」と自らハードルを上げてきたのは、昇格してJ2に定着するというクラブの将来像を見据えていたからだ。カターレの経営状況も理解したうえで、「昇格してもスポンサーが急激に増えるとは考えにくい。在籍している選手を伸ばし、J2で戦えるチームをつくって昇格しなければならない」という使命感があった。
2018年5月の就任以来、攻撃重視の魅力的なスタイルで、昇格を争い、J2復帰後の飛躍までを期待させてサポーターをはじめとする多くの人々の心に希望を灯した。勝負をかけた3年目の思わぬつまずきによって道半ばにして退任する。
コロナ禍のイレギュラーに加え、もう1つチームづくりに大きな影響を与えたのが昨季の残像だった。最終順位は4位だが昨季のゲーム内容は「圧倒的」と呼べるレベルに達していた。パスサッカーでほぼすべての試合を支配し、攻め続けて決定機を数多くつくり、相手にはゴールに迫る機会を与えなかった。その自信があったからこそ、誰もが「優勝によるJ2復帰」を実現可能な現実的目標と捉えていた。
しかし、昨季の主力からGK榎本哲也、DF脇本晃成、MF白石智之、DF前嶋洋太の4人が抜けた影響は思っていた以上に大きかった。シーズンをまたげばメンバーの入れ替わりはつきものであり、カターレもキャンプから新しい形を模索したが、どうしても昨季のベストパフォーマンスと比べてしまい、選手もスタッフも「なかなか上手くいかない」とストレスを抱えてしまった。
それでもコロナで開幕が3月初めから6月末に遅れ、その時点では目指しているパスサッカーがある程度はできるようにはなっていた。開幕の約10日前、一部にのみ公開された金沢とのトレーニングマッチの出来は秀逸なもので、不安は一掃されたかに思われた。しかし始まってみると、なかなか勝ち切れないもどかしい試合が続き、「もっとできるはずなのに」という思いが再び強まっていった。
ターニングポイントとなったのが第15節・G大阪U-23戦(9月12日)と第16節・C大阪U-23戦(同18日)だ。G大阪U-23戦を1-0で制して今季初の2連勝を飾ったにもかかわらず、「勝っただけで何もない。みすぼらしく感じるほどゲーム内容が悪かった」(安達監督)と深刻なムードが漂い、次週のC大阪U-23戦の逆転負けが決定打となった。
上位との差が広がったこともあって、指揮官は「小手先の修正ではどうにもならない。もう一度、積み上げる必要がある」とし、丁寧にパスをつなぐ「自分たちのサッカー」への原点回帰を求めた。だが、逆にこれがあだとなり、「自分たちのサッカー」にこだわるほどにカウンターから失点して負けが込む結果に。逆転負けが続いて完全に自信を喪失し、立ち直るまでに時間を要してしまった。
[3-4-3]にフォーメーションを変更して守備を厚くしてからゲーム運びが安定し、勝点が伸びた。崖っぷちに追い込まれ、ようやく当時のチーム状況に適した攻守のバランスをつかんだかたちだ。昨季の成功体験がなければ、小さなつまずきへの動揺や、守備的な戦いを選ぶことへのためらいも感じずに済んだかもしれない。
新型コロナウイルスの影響が日程やルール変更をはじめさまざまな形で表れた中で、安達監督は「わたしが最も重く受け止めたのは来季のJ2は下位4クラブが降格対象になるということだった」とシーズン後に明かした。「(昇格したうえで)絶対にすぐ降格しないように、今季在籍している選手全員をJ2で戦えるように育て、そのうえでチームとしてのかたちを成熟させなければならない」との思いをより強くしたという。試合までのトレーニングの量と質をなるべく落とさず、多くの選手に出場機会も与えられるという点にも期待してターンオーバー制の採用に踏み切った。「『昇格してもいないくせに』と言われてもしょうがない。今になって思えば壮大な夢だった。現実をみればよかったのだろうが、チームづくりの入りはそこだった」と自嘲気味に語った。
安達監督が「攻撃的なサッカーで圧倒的に勝つ」と自らハードルを上げてきたのは、昇格してJ2に定着するというクラブの将来像を見据えていたからだ。カターレの経営状況も理解したうえで、「昇格してもスポンサーが急激に増えるとは考えにくい。在籍している選手を伸ばし、J2で戦えるチームをつくって昇格しなければならない」という使命感があった。
2018年5月の就任以来、攻撃重視の魅力的なスタイルで、昇格を争い、J2復帰後の飛躍までを期待させてサポーターをはじめとする多くの人々の心に希望を灯した。勝負をかけた3年目の思わぬつまずきによって道半ばにして退任する。
コロナ禍のイレギュラーに加え、もう1つチームづくりに大きな影響を与えたのが昨季の残像だった。最終順位は4位だが昨季のゲーム内容は「圧倒的」と呼べるレベルに達していた。パスサッカーでほぼすべての試合を支配し、攻め続けて決定機を数多くつくり、相手にはゴールに迫る機会を与えなかった。その自信があったからこそ、誰もが「優勝によるJ2復帰」を実現可能な現実的目標と捉えていた。
しかし、昨季の主力からGK榎本哲也、DF脇本晃成、MF白石智之、DF前嶋洋太の4人が抜けた影響は思っていた以上に大きかった。シーズンをまたげばメンバーの入れ替わりはつきものであり、カターレもキャンプから新しい形を模索したが、どうしても昨季のベストパフォーマンスと比べてしまい、選手もスタッフも「なかなか上手くいかない」とストレスを抱えてしまった。
それでもコロナで開幕が3月初めから6月末に遅れ、その時点では目指しているパスサッカーがある程度はできるようにはなっていた。開幕の約10日前、一部にのみ公開された金沢とのトレーニングマッチの出来は秀逸なもので、不安は一掃されたかに思われた。しかし始まってみると、なかなか勝ち切れないもどかしい試合が続き、「もっとできるはずなのに」という思いが再び強まっていった。
ターニングポイントとなったのが第15節・G大阪U-23戦(9月12日)と第16節・C大阪U-23戦(同18日)だ。G大阪U-23戦を1-0で制して今季初の2連勝を飾ったにもかかわらず、「勝っただけで何もない。みすぼらしく感じるほどゲーム内容が悪かった」(安達監督)と深刻なムードが漂い、次週のC大阪U-23戦の逆転負けが決定打となった。
上位との差が広がったこともあって、指揮官は「小手先の修正ではどうにもならない。もう一度、積み上げる必要がある」とし、丁寧にパスをつなぐ「自分たちのサッカー」への原点回帰を求めた。だが、逆にこれがあだとなり、「自分たちのサッカー」にこだわるほどにカウンターから失点して負けが込む結果に。逆転負けが続いて完全に自信を喪失し、立ち直るまでに時間を要してしまった。
[3-4-3]にフォーメーションを変更して守備を厚くしてからゲーム運びが安定し、勝点が伸びた。崖っぷちに追い込まれ、ようやく当時のチーム状況に適した攻守のバランスをつかんだかたちだ。昨季の成功体験がなければ、小さなつまずきへの動揺や、守備的な戦いを選ぶことへのためらいも感じずに済んだかもしれない。
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