シーズン総括2020(上)■コロナがなければ…
- 2021/01/04
- 19:47
コロナがなければ…。口にすべきではないのかもしれない。だが記さずにはいられない。
戦績を振り返ってみて、J2昇格は可能だったと改めて感じる。第16節(9月18日)から第22節(10月18日)まで4連敗を含む1勝6敗という絶不調期があったにもかかわらずだ。直後の第12節(同21日)から第31節(12月5日)まで7勝2分1敗と巻き返し、昨季同期の勝点(20年:50、19年:49)を上回って昇格を争った。第32節・熊本戦(同9日)に敗れ、2試合を残して3位以下が確定したのは昨季と同じ。その後2連敗して15勝5分14敗・勝点50(52得点/43失点)の9位で終え、昇格した2位・相模原とは勝点11差だった。
優勝した秋田と2位・相模原にそろって黒星を付けたのは他の16チームでカターレだけ。3位・長野、4位・鹿児島からも勝利を挙げている。最終戦後の会見で安達亮監督は「相模原が2位になり昇格すると聞いたが、なんとも感慨深い。彼らが昇格できるのであれば我々にもチャンスはあった。非常に悔しく、残念だ」と話した。率直な思いだろう。目標に手が届くだけの力はあった。しかし出し切れなかった感が強い。新型コロナウイスルの感染拡大による多くのイレギュラーがカターレにはマイナスに働いた。
開幕が約4カ月遅れて日程が過密になった。これに対し、カターレはJ3では唯一、連戦でスタメンを大幅に入れ替えるターンオーバー制を採った。選手層の厚さを生かそうとする野心的なチャレンジだったが、成績だけで判断すれば成功したとは言い難い。約1週間に3試合を行う「3連戦」が8度あったが、勝ち越したのは第24-26節、第27-29節の2度だけだった。
安達監督が当初考えていた以上に、選手個々の心身のコンデションづくりが難しかった。疲れのないフレッシュな選手を起用したにもかかわらず、終盤に対戦相手より先に足が止まるケースが多かったのは象徴的だ。後半30分を過ぎてからの失点は総失点(43)の3分の1以上となる15を数えリーグ3番目に多かった。18チーム中15チームがこの時間帯に最も多く失点しているが、カターレは総失点に占める割合が最も高かった。
過密日程とコロナ感染防止のため練習試合を行えず、準レギュラークラスの選手がゲーム体力を養う機会が不足していた。これは選手の調子を見極めるうえでも障害となり、監督も「いつものように確信をもった起用ができていない」と勝手の違いを口にしていた。
対照的にスタメンを固定して戦った秋田や熊本、鳥取が連戦を生かして短期間で成熟度を高め開幕ダッシュに成功したのはカターレにとって皮肉な結果だった。第13節・熊本戦に敗れた時点で首位・秋田と勝点14差、2位・熊本と同11差がつき、「もう負けられない」という追い詰められた心理状態に早くも陥ってしまった。
ターンオーバー制は選手にとっては良い面も多かった。若手にも出場機会が与えられ、これによりMF宮城天やDF戸根一誓、DF馬渡隼暉らが台頭した。「全員が戦力」としてモチベーションを維持したことが終盤の追い上げにもつながった。一定の成果を認めたい。だが一方で、異なるやり方で臨んでいたら違った展開はあり得た。
2週間にわたり連戦が続くケースがあったJ1、J2に比べ、「3連戦ならケガ人も出さずに乗り切れたのではないか」との見方がある。スタメンを固定したチームにもそれなりの調整の苦労や5人に増えた交代枠を使って主力の消耗を抑えるといった工夫があったはずだ。しかし、安達カターレはコロナ禍の異例のシーズンに対応するべく、ひとつの決断を下した。それは成り行き任せにしない、果敢な一手だった。J2昇格を果たすうえでは結果的に裏目に出てしまったが、トライした価値は強調しておきたい。
※データスタジアム社の「Football LAB」では以下のコラムで今季における「前の試合からスタメンを入れ替えた数」のJ3平均は2.43人だったと記しています。
・2020年に起きたJリーグのデータ変化を追う https://www.football-lab.jp/column/entry/771/
戦績を振り返ってみて、J2昇格は可能だったと改めて感じる。第16節(9月18日)から第22節(10月18日)まで4連敗を含む1勝6敗という絶不調期があったにもかかわらずだ。直後の第12節(同21日)から第31節(12月5日)まで7勝2分1敗と巻き返し、昨季同期の勝点(20年:50、19年:49)を上回って昇格を争った。第32節・熊本戦(同9日)に敗れ、2試合を残して3位以下が確定したのは昨季と同じ。その後2連敗して15勝5分14敗・勝点50(52得点/43失点)の9位で終え、昇格した2位・相模原とは勝点11差だった。
優勝した秋田と2位・相模原にそろって黒星を付けたのは他の16チームでカターレだけ。3位・長野、4位・鹿児島からも勝利を挙げている。最終戦後の会見で安達亮監督は「相模原が2位になり昇格すると聞いたが、なんとも感慨深い。彼らが昇格できるのであれば我々にもチャンスはあった。非常に悔しく、残念だ」と話した。率直な思いだろう。目標に手が届くだけの力はあった。しかし出し切れなかった感が強い。新型コロナウイスルの感染拡大による多くのイレギュラーがカターレにはマイナスに働いた。
開幕が約4カ月遅れて日程が過密になった。これに対し、カターレはJ3では唯一、連戦でスタメンを大幅に入れ替えるターンオーバー制を採った。選手層の厚さを生かそうとする野心的なチャレンジだったが、成績だけで判断すれば成功したとは言い難い。約1週間に3試合を行う「3連戦」が8度あったが、勝ち越したのは第24-26節、第27-29節の2度だけだった。
安達監督が当初考えていた以上に、選手個々の心身のコンデションづくりが難しかった。疲れのないフレッシュな選手を起用したにもかかわらず、終盤に対戦相手より先に足が止まるケースが多かったのは象徴的だ。後半30分を過ぎてからの失点は総失点(43)の3分の1以上となる15を数えリーグ3番目に多かった。18チーム中15チームがこの時間帯に最も多く失点しているが、カターレは総失点に占める割合が最も高かった。
過密日程とコロナ感染防止のため練習試合を行えず、準レギュラークラスの選手がゲーム体力を養う機会が不足していた。これは選手の調子を見極めるうえでも障害となり、監督も「いつものように確信をもった起用ができていない」と勝手の違いを口にしていた。
対照的にスタメンを固定して戦った秋田や熊本、鳥取が連戦を生かして短期間で成熟度を高め開幕ダッシュに成功したのはカターレにとって皮肉な結果だった。第13節・熊本戦に敗れた時点で首位・秋田と勝点14差、2位・熊本と同11差がつき、「もう負けられない」という追い詰められた心理状態に早くも陥ってしまった。
ターンオーバー制は選手にとっては良い面も多かった。若手にも出場機会が与えられ、これによりMF宮城天やDF戸根一誓、DF馬渡隼暉らが台頭した。「全員が戦力」としてモチベーションを維持したことが終盤の追い上げにもつながった。一定の成果を認めたい。だが一方で、異なるやり方で臨んでいたら違った展開はあり得た。
2週間にわたり連戦が続くケースがあったJ1、J2に比べ、「3連戦ならケガ人も出さずに乗り切れたのではないか」との見方がある。スタメンを固定したチームにもそれなりの調整の苦労や5人に増えた交代枠を使って主力の消耗を抑えるといった工夫があったはずだ。しかし、安達カターレはコロナ禍の異例のシーズンに対応するべく、ひとつの決断を下した。それは成り行き任せにしない、果敢な一手だった。J2昇格を果たすうえでは結果的に裏目に出てしまったが、トライした価値は強調しておきたい。
※データスタジアム社の「Football LAB」では以下のコラムで今季における「前の試合からスタメンを入れ替えた数」のJ3平均は2.43人だったと記しています。
・2020年に起きたJリーグのデータ変化を追う https://www.football-lab.jp/column/entry/771/
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