第29節 秋田×富山 マッチレポート■乾坤一擲。無敗V阻み昇格へ望み
- 2020/11/23
- 08:27
【第29節 秋田0―1富山 ▽得点者:前半29分・平松(富)】
※ハイライト映像(J公式サイト)
試合が終わり秋田のJ3制覇を報告するセレモニーが始まった。無敗が止まったことを残念がる雰囲気はない。来場した誰もが選手たちの成し遂げた偉業の価値を分かっているからだろう。ゲーム中からポツポツと落ち始めていた雨が本格的に降り出したのはみんなが幸せなひと時を分かち合って家路についてからだった。
カターレは勝利の余韻に浸る間もなく駅に急いだ。祝賀の喧騒と並行して行われた記者会見で安達亮監督、FW平松宗、GK齋藤和希は淡々と質問に答えていた。「俺たちは昇格をあきらめていない」。目線はすでに次の試合に向いている。
秋田は優勝を決めた前節・G大阪U-23から先発を5人入れ替えてきた。選手には目標を達成した安堵感はあるはずで、中3日で心身を再調整するのは難しかったと思われる。前節は先発しなかった、今節に対するモチベーションの高い選手を起用するほうが、勝つためにも、チームの今後のためにも得策と吉田謙監督は考えたのだろう。
前カターレのDF谷奥健四郎が今季初先発し、地元出身の37歳のベテラン加賀健一とセンターバックコンビを組んだ。主力センターバックの千田海人と韓浩康がそろって先発を外れるのは今季初めて。ボランチでキャプテンの山田尚幸もスタメンを外れ、代わって法政大卒のルーキー下澤悠太が入った。
対するカターレは4人を入れ替えた。GK岡大生の負傷により、齋藤が第3節以来の先発出場。3バックの中央にはロングボールを多用する秋田に対抗するべく、DFルーカス・ダウベルマンが抜てきされた。齋藤は開始9分、秋田の左サイドバック輪笠祐士のカットインからゴール右上を狙ったミドルシュートに飛びつき右手で枠から弾き出す。その後も秋田のDFラインとGKの間に入れてくるクロスを何度もキャッチして守りを支えた。ダウベルマンも期待通りの奮闘で相手エースFW中村亮太に仕事をさせなかった。
この日のカターレは警戒していた秋田のカウンターアタックを食らうシーンが少なかった。イージーなパスミスが少なかったのはこの一戦にかける集中力の高さゆえだろう。シャドウのMF佐々木陽次が機転を利かせて後方まで下がってパス回しを助けた。セットプレーを含めた攻撃をシュートで終わる意識も高かった。
最初の好機は前半14分、コート中央でのパス交換から右へ展開してDF柳下大樹がファーに浮き球のクロスを入れ、逆サイドからウイングバック末木裕也が詰めてゴールに迫った。
秋田は今季28試合で失点8。まだ先制点を奪われたことがなかった。MF花井聖は「チャンスを数多くつくって、J1クラスのクオリティーの高さを自分たちが出すか、ゴール前での事故的な失点を誘うしかない」と事前に語っていた。ゴールをこじ開けるのは秋田を倒すうえで最も高いハードルだったが、前半29分にほしかった1点が挙がった。
右サイド深くのスペースに走り込んだMF碓井鉄平がスローインを右足のアウトサイドでコントロールしてツータッチ目で低いクロスを送る。相手DFがクリアし切れずペナルティーエリアにこぼれたところに末木が飛び込んで混戦となり、左に詰めていた平松にボールが渡った。秋田GK田中雄大が至近距離からのシュートを一旦はセーブしたが弾んだボールを平松が押し込んだ。
後半は両者が次の1点を目指して攻防が激しくなった。カターレはセットプレーも含めて何度かチャンスをつくったが追加点を奪うまでには至らない。対する秋田がロングボールを使ってパワーを前面に押し出すようになると、浮き球が飛び交ってボールが地面に着かない局面が続くようになる。カターレにとって分が悪いとみられたこの競り合いで互角に踏ん張ったことが大きかった。
同24分、攻撃のCKからカウンターを浴びてGKのパントキックから複数人がゴール前になだれ込んできたが体を張ってしのぐ。最も危なかったのが同28分。右FKからMF江口直生が入れた低い弾道のクロスに中村が足先を伸ばして触ったがボールは際どく右に外れた。
その後も秋田はロングスローを含むセットプレーを中心に同点を目指す。江口が多彩なボールを蹴り分けて脅威を与えた。カターレは20分過ぎから交代カードを切って逃げ切り態勢を固めていった。相手の圧力に引かずに踏ん張り、佐々木陽に代わって入ったMF稲葉修土らがロングボールの出どころにもプレスをかけた。DF戸根一誓が速攻からのクロスを自ゴール方向へ恐れずクリアし、アディショナルタイムには碓井が敵陣深くまでスプリントして相手キックをブロックした。
後半途中から出場した秋田のMF久富賢が「相手から『絶対にこの試合を取ってやる』という気持ちを感じた。相手のほうが声をしっかり出していた。自分たちはもっと戦わなければいけないときょうの試合で改めて思った」と振り返っている。
秋田からの勝利はカターレのJ3初戦だった2015年3月15日以来で5年・12試合ぶり。「なかなか良い試合ができていない今季にあって、秋田に初黒星を付けることは我々に課された使命なのかもしれない」(安達監督)。チームの一人ひとりが胸に秘めていた熱い思いがピッチで結実した。
※ハイライト映像(J公式サイト)
試合が終わり秋田のJ3制覇を報告するセレモニーが始まった。無敗が止まったことを残念がる雰囲気はない。来場した誰もが選手たちの成し遂げた偉業の価値を分かっているからだろう。ゲーム中からポツポツと落ち始めていた雨が本格的に降り出したのはみんなが幸せなひと時を分かち合って家路についてからだった。
カターレは勝利の余韻に浸る間もなく駅に急いだ。祝賀の喧騒と並行して行われた記者会見で安達亮監督、FW平松宗、GK齋藤和希は淡々と質問に答えていた。「俺たちは昇格をあきらめていない」。目線はすでに次の試合に向いている。
秋田は優勝を決めた前節・G大阪U-23から先発を5人入れ替えてきた。選手には目標を達成した安堵感はあるはずで、中3日で心身を再調整するのは難しかったと思われる。前節は先発しなかった、今節に対するモチベーションの高い選手を起用するほうが、勝つためにも、チームの今後のためにも得策と吉田謙監督は考えたのだろう。
前カターレのDF谷奥健四郎が今季初先発し、地元出身の37歳のベテラン加賀健一とセンターバックコンビを組んだ。主力センターバックの千田海人と韓浩康がそろって先発を外れるのは今季初めて。ボランチでキャプテンの山田尚幸もスタメンを外れ、代わって法政大卒のルーキー下澤悠太が入った。
対するカターレは4人を入れ替えた。GK岡大生の負傷により、齋藤が第3節以来の先発出場。3バックの中央にはロングボールを多用する秋田に対抗するべく、DFルーカス・ダウベルマンが抜てきされた。齋藤は開始9分、秋田の左サイドバック輪笠祐士のカットインからゴール右上を狙ったミドルシュートに飛びつき右手で枠から弾き出す。その後も秋田のDFラインとGKの間に入れてくるクロスを何度もキャッチして守りを支えた。ダウベルマンも期待通りの奮闘で相手エースFW中村亮太に仕事をさせなかった。
この日のカターレは警戒していた秋田のカウンターアタックを食らうシーンが少なかった。イージーなパスミスが少なかったのはこの一戦にかける集中力の高さゆえだろう。シャドウのMF佐々木陽次が機転を利かせて後方まで下がってパス回しを助けた。セットプレーを含めた攻撃をシュートで終わる意識も高かった。
最初の好機は前半14分、コート中央でのパス交換から右へ展開してDF柳下大樹がファーに浮き球のクロスを入れ、逆サイドからウイングバック末木裕也が詰めてゴールに迫った。
秋田は今季28試合で失点8。まだ先制点を奪われたことがなかった。MF花井聖は「チャンスを数多くつくって、J1クラスのクオリティーの高さを自分たちが出すか、ゴール前での事故的な失点を誘うしかない」と事前に語っていた。ゴールをこじ開けるのは秋田を倒すうえで最も高いハードルだったが、前半29分にほしかった1点が挙がった。
右サイド深くのスペースに走り込んだMF碓井鉄平がスローインを右足のアウトサイドでコントロールしてツータッチ目で低いクロスを送る。相手DFがクリアし切れずペナルティーエリアにこぼれたところに末木が飛び込んで混戦となり、左に詰めていた平松にボールが渡った。秋田GK田中雄大が至近距離からのシュートを一旦はセーブしたが弾んだボールを平松が押し込んだ。
後半は両者が次の1点を目指して攻防が激しくなった。カターレはセットプレーも含めて何度かチャンスをつくったが追加点を奪うまでには至らない。対する秋田がロングボールを使ってパワーを前面に押し出すようになると、浮き球が飛び交ってボールが地面に着かない局面が続くようになる。カターレにとって分が悪いとみられたこの競り合いで互角に踏ん張ったことが大きかった。
同24分、攻撃のCKからカウンターを浴びてGKのパントキックから複数人がゴール前になだれ込んできたが体を張ってしのぐ。最も危なかったのが同28分。右FKからMF江口直生が入れた低い弾道のクロスに中村が足先を伸ばして触ったがボールは際どく右に外れた。
その後も秋田はロングスローを含むセットプレーを中心に同点を目指す。江口が多彩なボールを蹴り分けて脅威を与えた。カターレは20分過ぎから交代カードを切って逃げ切り態勢を固めていった。相手の圧力に引かずに踏ん張り、佐々木陽に代わって入ったMF稲葉修土らがロングボールの出どころにもプレスをかけた。DF戸根一誓が速攻からのクロスを自ゴール方向へ恐れずクリアし、アディショナルタイムには碓井が敵陣深くまでスプリントして相手キックをブロックした。
後半途中から出場した秋田のMF久富賢が「相手から『絶対にこの試合を取ってやる』という気持ちを感じた。相手のほうが声をしっかり出していた。自分たちはもっと戦わなければいけないときょうの試合で改めて思った」と振り返っている。
秋田からの勝利はカターレのJ3初戦だった2015年3月15日以来で5年・12試合ぶり。「なかなか良い試合ができていない今季にあって、秋田に初黒星を付けることは我々に課された使命なのかもしれない」(安達監督)。チームの一人ひとりが胸に秘めていた熱い思いがピッチで結実した。
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